サクラのバイトは詐欺の可能性も…結婚相談所のお見合い、マルチ商法の表彰式にも

 B子(30代モデル・仮名)は、与党候補者の選挙演説を聴くサクラをやったことがあるという。

「モデル事務所に案件がきました。『政治関係のお仕事。45歳以下の美女募集。内容は決定者にのみご連絡(秘密)』みたいな感じでした。うちのモデル事務所だけじゃなく、数社に依頼がきていたみたいで、全部で70人の美女が必要だったみたいです。結局40人くらいしか集まりませんでした。ギャランティは3000円でした」

 明確な違法性はないにしても、国家公務員によると政治家は「特定の国民に奉仕するのではなく、国民全体の奉仕者として公共の利益の増進に尽くさなければならない」とされている。それにもかかわらず、政治家が政治資金を使ってサクラを雇うなど言語道断だ。この情けない候補者とは一体誰なのか。

「名前は言えないのですが……、与党に長くいる元弁護士の方です」

 与野党限らず、選挙期間中、候補者演説の聴衆にやたら美女の比率が多い光景に出くわしたとしたら、それはサクラなのかもしれない。

(3)マルチ商法の表彰式のサクラ

「他の人に商品を紹介したらお金が得られる」と打ち出して会員が新規会員を誘い、その新規会員がまた別の会員を勧誘するし、商品の連鎖販売をさせるマルチ商法。大抵の組織はピラミッド構造で成り立っていて、トップに「メンター」なる創始者が君臨する。永久に会員を獲得し続けなければならないという自転車操業のため、とにかく「頑張れば金持ちになる」「地道に働くより、一攫千金だ」と信用させなければならない。

 幹部がセレブのようにブランド品や高級車をひけらかし、(時には借金してでも)金持ちを装うことも手立てのひとつだが、「たくさんの会員を獲得し、たくさんの商品を売った」として表彰式を派手に演出することもある。

 そんなマルチ商法の表彰式にも、しばしばサクラが雇われることがある。C子(20代モデル・仮名)は、マルチ商法の表彰式のサクラをしたことがあるという。

「私が登録しているモデル事務所に、マルチ商法のサクラ案件がきました。といっても、名目上は『イベントのエキストラ』となっていたので、現場に行ってみて初めてマルチ商法の表彰式だとわかりました。

 うちのモデル事務所で100人募集していましたが人数が足りず、いろんな事務所に声をかけていたみたいです。表彰式は武道館で行われました。ギャランティは3時間くらいで8000円だったので、座っているだけだし楽でしたね」

 杉山弁護士によると、マルチ商法のサクラアルバイトは案件によって詐欺の片棒を担ぐことになると警鐘を鳴らす。

「表彰式に参加するだけなら詐欺にあたりません。しかし、マルチ商法の詐欺業者と結託し、会場で業者と一緒に勧誘し、顧客に金銭を交付させるよう仕向ければ、サクラといえども詐欺になります。刑事責任や民事賠償などの責任を追及されかねません」(杉山弁護士)

 それにしても、武道館を貸し切り、サクラを雇うなど、相当な予算を使っているのは間違いないが、サクラを雇わなければならないくらい会員が離れているのだろうか。

(4)ライブのサクラ

 音楽ライブの成否は、パフォーマーの実力次第であることは当然だが、大勢の観客が集まれば会場は活気に満ち、より一層盛り上がる。そのため一部のアーティスト・芸能事務所は、音楽ライブにサクラを雇うという。

 D子(20代モデル・仮名)は、あるアーティストのライブでサクラをやったという。

「そこそこ知られたアーティストのライブだったので、ビックリしました。年輩のファンが多く、若い女性ファンが足りなかったのかもしれません。サクラモデルはマスコミが撮影する際に、目にとまるように前のほうに席が決まっていました。ギャランティは2時間で8000円くらいでした」

 違法ではないだろうが、正規にライブ観覧料金を支払っているファンの立場を考えると、いかがなものかとも感じる。

 サクラのバイトも多種多様にあるが、安易な気持ちで参加すると、意図せず詐欺の片棒を担いだり、社会的な信用を失墜させることにもなりかねないので、要注意だ。

(文=深月ユリア/ジャーナリスト)