世帯年収600万円でも当たり前…中学受験の意外な目的、公立校「不信」も拍車

 近年では第一志望だけに集中するのではなく、我が子を通わせる価値のある学校を複数探し、併願プランを考え抜いたうえで入試に臨む家庭が増えています。中学受験では、そもそも第一志望に入学できる割合が2、3割といわれており、受験にかけた膨大な時間や費用のことなどを考え、とりあえずどこかの私立中学に入学させようという思惑もあるかもしれません。しかし、第一志望以外の私立に通うことになったとしても、あるいは最終的に公立に通うことになったとしても、合格を手にしたうえで次に進むことは、自分の積み重ねてきた努力が無駄ではなかった証明にもなるんです。これは子どもにとって大きな自信になるでしょうし、その後の人生でもこの経験が活きてくることは間違いありません。

 余談ですが、子どもから自発的に中学受験してみたいと志願するケースも一定数存在します。理由としては『友達が塾に通っているから』『友達が中学受験をするから』というものなのですが、個人的に子ども自らモチベーションを保って勉強に臨むことは、その子にとってプラスになることだと思います。同世代の子どもたちと連帯感を持ちつつ、競い合える機会にもなりますので、ほどよく楽しみつつ、緊張感をもって勉強できるはずです」(同)

 来年度以降の中学受験における試験問題の出題傾向について、いくつか従来とは異なるポイントがあると馬屋原氏はアドバイスする。

「まず近年の受験問題では、科目を問わず、インプットした知識をどう使いこなせるかを問う問題が出題される傾向にあります。たとえば、『議院内閣制』という用語について、その言葉の概要だけではなく、『アメリカの大統領制と比べてその違いを考えなさい』といった問題が出題されるんです。アウトプットの仕方が問われるようになってきたといえます。

 そのため、暗記だけするという旧来の勉強法では不十分です。暗記とその用語の理解があって、初めて最近の受験傾向に対応できるようになるので、単純に昔に比べて子どもへの負荷が増したともいえますね。ですから家庭でも子どもの覚えた内容について、どのように説明できるか、関連するほかの用語との違いを比較できるかなどを、さりげなく聞いてみて、学習内容の定着や創造的思考の醸成を図ることが重要になってきているのです」(同)

 学業面での心配のみならず、子どもの人間関係やその子に合う環境を憂慮してしまうのは、少子化や将来への心配が強くなった今どきの親ならではの悩みともいえ、そういった背景もあり中学受験者数が増えているようだ。

(取材・文=A4studio、協力=馬屋原吉博/中学受験個別指導教室SS-1副代表)