「人生100年時代」といわれる現代において、70代は「人生の黄金期」であり、年を重ねたからこそ、いいことがたくさん起こる。そう述べるのは、高齢者専門の精神科医として30年以上にわたり高齢医療の現場に携わっている和田秀樹氏だ。
最新の研究では、「70歳以降も知識力は伸び続け、40歳頃を上回る」「本当の健康寿命は、男女とも80歳以上」「幸福度が最高値に達するのは82歳以上」という事実が明らかになっているという。『70代から「いいこと」ばかり起きる人』(朝日新聞出版刊)は、世の中にはびこる間違った高齢者のイメージを変え、年をとることにもっとポジティブになるための高齢者の正しい姿を和田秀樹氏が紹介する一冊だ。
人の知的な能力には、いろいろ種類がある。どれくらい知識を持っているか、知識をたくわえることができるかという「知識力」や、道筋を立ててものごとをとらえる「論理的・抽象的思考力」、さらには外から与えられた情報をすばやく処理する「情報処理のスピード」などだ。
国立長寿医療研究センターの調査によれば、知識力は、年を重ねることによって成熟していくことがわかっているという。知識力は70歳を過ぎるまで上昇し、その後ゆるやかに低下していくが、90歳になっても40歳よりも高いという結果が出ている。一方、情報処理のスピードのような能力は、50代まで向上するが、その後は急激に低下していく。
若い頃は、さっと計算したり、覚えたり、問題をすばやく解決することが得意だが、年齢を重ねてからは、ものをよく知っていたり、一つのことにじっくりと取り組むことが得意になる。頭の良さの内容は、人生それぞれの段階で異なるというわけだ。
また、幸福度は最高値に達するのは82歳以上という研究結果が出ているという。これは、アメリカ・ダートマス大学の経済学者、デービッド・ブランチフラワー教授が、世界132カ国を対象に、人生の幸福度と年齢の関係を調べる研究を行った結果、人生の幸福度が最高値に達するのは、82歳以上だと判明したのだ。
人の幸福度は18歳から下がり始め、47~48歳で不幸のピークに達したのち、再び上がり始める。その軌跡はアルファベットの「U」を描くことから、「幸福のUカーブ」と呼ばれている。この「幸福のUカーブ」は、先進国でも発展途上国でも、欧米でもアジアでも変わらず、世界共通なのだという。
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年をとると、心も身体も思い通りにならないことが増えていくかもしれない。しかし、年を重ねることにネガティブな感情を抱くだけでなく、70歳を超えたからこそ、いいこともたくさんあることを本書から知れば、より充実した日々が過ごせるはずだ。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。