そんな私立進学が多い東京だが、一部のエリアによっては伝統的に都立志向が強いところもあるという。
「傾向として、23区外だと多摩地区の北部や西部、23区内だと東側の城東地区や、城北地区の東側などは全体的に都立高校人気が高いです。特に多摩地区は国公立難関大学合格実績を魅力にしている私立高校が23区ほどは多くないことで、国立高校、八王子東高校、立川高校といった進学指導重点校が目立つためだと推測できます。とはいえ武蔵野市、府中市、調布市、町田市などでは私立高校進学に対する意識がほかの地域と異なるという話も聞きますし、一概に多摩地域全体を都立高校志向が高い地域だとは言い切れません。年度によって違いはありますが、私立高校が多い東京のなかでは、都立高校志望の割合が比較的高い地域であるとはいえますね」(同)
都立高校志望者数は減少傾向にあるそうだが、それでも人気のある都立高校は存在するようだ。
「国立高校や私立高校と併願して志望する生徒は多いものの、やはり第1希望として進学指導重点校、進学指導特別推進校といった大学進学に力を入れた都立高校を目指す生徒は少なくないですね。人気の高い都立高校の一般入試の応募倍率を見ると、2倍を超えている学校も目立ちます。ただし、応募倍率は出願した人数を表わしており、都立高校を、第一志望の国立・私立高校のおさえとして応募する生徒も多いことから、実倍率が高いとは言えませんのでご注意ください」(同)
ここで2023年度の実受験者と実合格者から算出した都立高校の実倍率を見てみたい。たとえば、人気の高い進学指導重点校の日比谷高校の最終応募倍率は男子が2.59倍、女子が1.96倍となっているが、実倍率を見てみると男子が1.72倍、女子が1.75倍という結果になっている。また、そのほかの実倍率を見ると、西高校は男子が1.46倍、女子が1.65倍、国立は男子が1.28倍、女子が1.34倍という数字に。先述したように都立高校は他校の併願生徒が多いという事情もあることから、池田氏の語るように都立高校の最終応募倍率を実質的な人気と断定することはできない。あくまで応募者数が多いということだけを理解しておくほうがよいだろう。
では進学指導重点校などの大学合格実績はどうなっているのか。
「進学指導重点校に関しては、難関国公立大現役合格15人を条件としています。ひとつの学校の1学年に320人ほど在籍しているので、少なくとも毎年5%ほどが難関国公立大に合格することが目標になっています。トップ校である日比谷高校、西高校、国立高校を中心に東大や京大といった難関大に進学する生徒の割合がもっと高く、コンスタントに高い合格実績を出していますね」(同)
進学指導重点校に次ぐ進学指導特別推進校や進学指導推進校も進学実績はよい。国公立大合格者に関しても、19~21年の現役生を見ると、進学指導特別推進校が平均74.3校、進学指導推進校が38校と結果を出しているといえる。
進学指導重点校などの東京都教育委員会指定の都立高校のなかには、一般入試で独自の検査問題を採用しているところもあり、難度の高い出題も多いという。今後受験する生徒や保護者が対策すべきことや気を付けておくべきことは何か。
「すべての進学指導重点校、それから進学指導特別推進校の国分寺高校、新宿高校、進学指導推進校の墨田川高校の10校は、国数英の3科目で独自の検査問題を課しています。理科と社会は共通問題です。また、国際高校も英語だけ独自問題です。それ以外の都立高校でも、一部に別問題や学力検査を課さない、といった事例はありますが、多くの学校では共通問題を使用します。特にこの10校の国数英と国際の英語は個別の対策が必要となるので、志望校を検討する段階で、どこの学校を受験しようとするかはっきりさせたうえで勉強していきましょう。