「銭湯は『公衆浴場』に分類されており、その料金は物価統制令によって都道府県知事が決める統制価格となっているので、上げようにも上げられません。たとえば東京都は現在、大人(12歳以上)500円、中人(6~11歳)200円、小人(6歳未満)100円と定めており、銭湯ごとに勝手に値上げすることはできないのです」(同)
ガス代の高騰で苦しめられている銭湯業界、今の苦境を生き延びる術はないのだろうか。
「非常に難しい問題です。国内では今年1月から、電気代・ガス代の負担軽減策である『電気・ガス価格激変緩和対策事業』が始まっています。東京ガスは2023年2月検針分の単価から、政府支援によってガス1立方メートルあたり税込30円を割り引いていますが、1カ月のガス代が60万円前後が一般的な銭湯業界では、この微々たる減額が抜本的な解決策になるわけではないため、銭湯業界が救われるかというと大いに疑問です。
ほかには、公衆浴場からスーパー銭湯などと同じ『日帰り入浴施設』に業態を鞍替えすれば、自由に料金を決めることはできます。しかしこういった施設はたまに来るアミューズメント施設として、多様なサービスを受けられるからお客も高額設定に納得してくれているので、銭湯と同じ内装やサービスでは安定した集客は望めないでしょう。また、同じ土地で鞍替えするとなると、安い統制価格ゆえに普段使いしてくれていた近隣の常連層を失うリスクもあります」
では大黒湯の苦境打開策としては、どのような戦略が考えられるだろうか。
「最も即効性がある対策は営業時間の短縮ではないでしょうか。平日を午前0時までの営業とするだけで、19時間営業が9時間営業になり、燃料費をほぼ半減させることができると思います。もちろん、お店のコンセプトやウリなどもあるので簡単にはいかないかもしれませんが、背に腹は代えられないでしょうね」(同)
(文=A4studio、協力=寺尾淳/フリージャーナリスト)