「今回の決定で第2四半期の世界の原油市場は供給不足となり、原油価格は1バレル=100ドルを超える」の声が出ているが、はたしてそうだろうか。筆者は「金融不安はこれから本格化し、原油価格は急落する」と考えている。市場関係者の注目は銀行の融資先に向かいつつあるからだ。
足元で槍玉に上がっているのは商業用不動産だ。引き締めの影響に加え、新型コロナのパンデミックで普及した在宅勤務のせいで空室率が急上昇していることが悪材料となっている。住宅用不動産市場も「バブル崩壊は時間の問題だ」との声が聞こえてくる。中国でも人口減少が激しい地方都市で不動産価格の下落圧力が強まっており、中小銀行の連鎖破綻が懸念されている(4月4日付日本経済新聞)。
「今回の危機の震源地は中小銀行とノンバンクだ」と筆者はみている。中小銀行やノンバンクが破綻しても、リーマンショックのような金融危機は起きないが、マネーが急激に収縮し、世界経済全体が深刻な資産デフレに陥るリスクがある。バブル崩壊後の日本のようにデフレは原油需要を急減させる効果をもたらすことから、OPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国で構成)は再び大規模な減産を実施せざるを得なくなるのではないだろうか。
(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)