ただ、今でも堅調なメルカリですが、一方で発送作業を自分でやらなければいけなかったり、取引交渉を自分でやらねばならなかったりと、利用の面倒さがよく指摘されています。そのためメルカリの利用者の多くが20代から30代で、こうした作業を面倒に思う40代や50代の層はリユースビジネスにおいてブルーオーシャンだったのです。また、単価が安いもの、大きいものは送料負担があり、売っても利益が出ないため、メルカリでは売ることができません。そこをうまく取り込んだのが2nd STREET。郊外のロードサイドを中心に店舗展開している同チェーン店は、車などで大量に中古品を持っていっても簡単にさばいてくれるので、実はメルカリと競合しないうまいところを突いているのです」(同)
そんなゲオHDとは対照的に、当時ライバルであったTSUTAYAは凋落が顕著だという。
「TSUTAYAを運営しているカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、自社の既存事業が、ECや配信ビジネスなどへデジタルシフトした後の事業形態として計画していたのは大規模なビッグデータビジネスでした。会員証の代わりでもあったTポイントカードをコンビニ、ファミレスなどさまざまな異業種で使えるように連携したほか、オンラインでもこうしたTポイントシステムを軸にしたTポイント経済圏とでもいうべきビッグデータビジネスを目指し、利用者獲得に向けて精力的に動いてきました。実際、こうした取り組みでは先駆者的な側面もあり、当初は好調だったのですが、2010年代の後半から雲行きが怪しくなります。
それは、CCCの戦略を、Amazon、楽天といったEC大手、NTTドコモ、au、ソフトバンクなどの携帯キャリア大手が、ビッグデータビジネスに本格参入してきたためです。競合がTポイントよりも効率的なシステムが、急速に経済圏を構築したことで、TSUTAYAとTポイントの存在感は一気に薄くなってしまいました。また、TSUTAYAは書店ビジネスも展開していましたが、近年のECシフトのあおりを食らってこちらも不調気味。2011年にCCCは上場廃止してしまっているので、詳細な業績を知ることはできませんが、ゲオHDとの差が歴然なのは自明です」(同)
今後もゲオHDのリユースビジネスは安定的な人気を博すと予測されるという。
「ゲオHDがレンタルブームの終了を経ても生き残れたのは、ビッグデータビジネスというより大きな魚を釣ろうとして、GAFAや大手ECを競合としてしまったCCCとは異なり、市場規模は大きくなくとも、強いライバルが少ないリユース事業に徹した、その堅実さによるところも大きいでしょう。リユース事業はオンラインでもやってはいますが、あくまで実店舗がメインなことは今後も変わらないと思います」(同)
かつてライバル同士でしのぎを削りあってきたGEOとTSUTAYA。変革の時を経て振り返る両社の軌跡は、まるで「うさぎと亀」を見ているようだ。リユースビジネスという新たな鉱脈をつかんだゲオHDは、今後も地に足のついた成長を続けていくことだろう。
(文=A4studio/協力=中井彰人/流通アナリスト)