だが、ヒカキンが購入したような数千万円レベルのカードが取引されるようになると、それに関連したトラブルも増えつつあるのも事実だ。昨年11月末には大阪のカードショップに空き巣が入り、高額なポケモンカードが軒並み盗難される事件が起きているほか、今年1月にも東京・秋葉原でオープンから間もないポケカ専門店が店内のほとんどのカードを奪われる窃盗事件が発生している。
「数百万から数千万円の価値があるトレカは、言ってしまえば宝石や高級時計と同じ。セキュリティの面でも同じレベルの取り扱いをすべきでしょう。実際、中古カードショップでも店頭にはカードのコピー品を並べ、購入希望者には現物を金庫から取り出して受け渡すといった対策をする店が増えています」(同)
トレカ市場拡大に目をつけた悪事はこれだけではない。昨年12月には、人気アニメのトレカ販売を手がける会社の元代表が、遊戯王やポケモンカードの1枚数十万円の高額で取引されるレアカードを数多く仕入れたように装う手口を使い、所得税など約4500万円を脱税していたニュースもあった。
「脱税トラブルには個人レベルでも注意が必要です。トレカ売買は中古品の取引になるため、本来は古物商免許の取得が必要になります。少額ならまだしも、数百万レベルの取引だと、市場の拡大に伴って厳しく取り締まられていく可能性もあるでしょう」(同)
さらに、最近は本物同然の偽造カードも流通している。また、空売りや取引詐欺なども増加しており、被害者も続出しているという。
「フリマサイトには本物のカードの写真を載せているのに、届いた現物が違うカードだった詐欺行為もよく耳にしますね。こうした詐欺まがいのトラブルを防ぐには、トレカの真贋鑑定を行えるPSA、BGSといったサービスの活用が有効です。いずれの鑑定も海外で行われるため一定のコストはかかるものの(PSAは年内に国内サービスを開始する見通し)、今後トレカ販売に伴うトラブルが増えていきかねないことを考えると、取引の安心材料として重宝されていくと見込まれます」(同)
すでに市場が成熟し、現物の取引だけでなく周辺の産業も活気づいてきているトレカ投資の世界。それだけで生計を立てられるほどの可能性に満ちているが、トラブルには十分な注意が必要なようだ。