「JR北海道をめぐっては、北海道日本ハムファイターズの本拠地移転に伴う北広島市への新駅建設で地元負担が増加するとの報道があったばかり。根室本線(富良野-新得)の来年3月末での廃止と4月からのバス転換も決まりつつある。JR北とカネに関する話題は尽きない」(地元記者)
JR北をめぐる次の話題は工事費の増加だ。北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)の工事実施計画をめぐり、工事予算が4328億円増加し、札幌駅の駅構造も橋上駅へと変更されることがわかった。北海道新幹線関連では、昨年12月に有識者会議報告書にて6445億円の事業費の増加が示されたところ。前述の増加分と6445億円を加えた増額分は約1兆1000億円となり、さらなる負担が重くのしかかることとなった。
本稿記者が入手した資料によると、工事予算の変更として、設備工事に関する費用4328億円と昨年の有識者会議で示された増加分6445億円の約1兆1000億円が増加する。これに認可額1兆2386億円を加えると、工事予算は合わせて2兆3159億円となる。なお、当初の試算額は1兆6714億円。
時をさかのぼると、以前に当サイト記事(https://biz-journal.jp/2023/02/post_333529.html)でも触れたが、国土交通省の「北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)の整備に関する有識者会議」が昨年12月7日に示した「北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)の整備に関する報告書」では、予期せぬ自然条件への対応や着工後の関係者との協議等への対応、着工後の経済情勢の変化への対応等に要する費用として約6445億円が増加すると報告されている。
また入手した資料には、整備する駅の構造上の変更が生じるとの記載もある。2030年度末に予定する札幌延伸開業の際には、新函館北斗駅と札幌駅の間に新八雲駅(仮称、北海道八雲町)、長万部駅(北海道長万部町)、倶知安駅(北海道倶知安町)、新小樽駅(仮称、北海道小樽市)が開業。このうち長万部駅と倶知安駅は現在も使用している駅を新幹線駅として整備することになっている。新八雲駅(仮称)では地平駅から高架下駅へ、そして札幌駅では高架下駅から橋上駅へ変更するという。ただ、ここにきて構造が変わるとなると、設計変更の必要性が出てくる。その読み通り、資料には設備工事の追加として、軌道や電気、建築等の設備工事を追加するとの記載があることから、構造の変更に伴う費用が増えていると予想できる。
駅構造変更の理由について、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の担当者は「自治体との協議を踏まえた結果」と本稿記者の取材に答えたほか、道の担当者は「北海道新幹線建設主体である鉄道建設・運輸施設整備支援機構から国土交通大臣に対し、工事実施計画の変更が申請されており、国土交通大臣が認可すれば変更される」と暗に計画変更を認めた。
さらに「なお、変更認可にあたっては、工事に要する費用を負担する費用を負担すべき都道府県の意見を聴くこととされており、現在、道に対する意見照会がされているところ」と回答した。今後は国からの意見照会の対応を検討するとした。
今後の焦点は、増加分の費用負担だ。国土交通省が昨年12月に示した財源措置では、増額分の一部2922億円のうち1926億円(66%)はJRの貸付料で、664億円(23%)は国、地元自治体は332億円(11%)を負担するとしている。道ではこれまで、できるだけ地方負担を軽減すること等を要望してきた。しかしこのような事態になっては、さらに地元自治体等の負担額が増えるおそれがある。
「負担額がまた増えると、地元にとっては痛手だ。自治体にとっては、どうにかしてJR北側にも負担してほしいと懇願する声が多いものの、JR北も経営が厳しい。国にこれ以上の負担を要望するか、JR側にもっと貸付料で負担するよう働きかけるか、地元自治体が腹をくくるつもりで負担していくしかないのでは」(地元関係者)
「北海道新幹線はそもそも赤字が出る想定。運転をこれ以上続けていても赤字は増え続けるだろう。新函館北斗駅から札幌駅までの駅数をもう少し減らすこともできたはずだが、もう時すでに遅し。これからは赤字の幅をどれだけ減らせるかによって、将来は変わるだろう」(地元の業界紙記者)
道や経済・地元建設団体等は、予定通り2030年度末の完成と開業を実現するよう要望しているが、暗雲が立ち込めてきている。
(文=小林英介)