高価格のロイヤルホスト好調、ガスト低迷、なぜ逆の現象?「ガスト=安い」の魅力消失

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「ロイヤルホスト」のHPより

 ファミリーレストランチェーンとしては高価格帯の「ロイヤルホスト」の売上が新型コロナウイルス感染症拡大前を超える水準まで回復する一方、低価格帯の「ガスト」が低迷を続けている。原材料費やエネルギー価格の高騰による物価上昇が家計を圧迫し消費者が財布の紐を絞るなか、一見すると逆の現象が起きているようにも思えるが、なぜなのだろうか――。

 両チェーンの類似メニューの価格を比較してみると、ロイヤルホストの「アンガスサーロインステーキ」は2728円(税込/一部店舗は異なる、以下同)で、ガストの「サーロインステーキ」は1594円。ロイヤルホストの「海老と帆立のシーフードドリア」は1518円で、ガストの「海老とたらこのチーズドリア」は934円。ロイヤルホストの「NIKUVEGE タイ風スパイシーライスプレート」は1518円で、ガストの「ガパオライスプレート」は989円。ロイヤルホストの「190gレギュラー 黒×黒ハンバーグ」(目玉焼き付き)は1408円で、「デミたまハンバーグ」(同)は780円。内容量や素材の違いはあるものの、メニュー全体的にロイヤルホストのほうが高価格であるといえる。

 物価上昇が続く現在の経済状況を踏まえれば、ガストのほうが多くの「庶民」に選ばれそうだが、実態は逆となっている。ロイヤルホストの2022年12月期の既存店売上高(累計)は前年比22.5%で、新型コロナ感染拡大前の19年の数字を上回る水準となっている。一方、ガストを運営する「すかいらーくグループ」全体の既存店売上高(累計)は前年比13.7%増となったものの、19年12月期の81.3%にとどまっており、まだ本格回復は遠い様子がうかがえる。

 フードアナリストの重盛高雄はいう。

「総務省統計局の家計調査によると、二人以上の世帯支出金額のうち消費支出に占める外食費の割合は2021年が平均3.7%(10451円)、22年が同4.2%(12304円)と増加傾向を示している。東京・有楽町界隈では客単価の高い飲食店やファミリーレストランが賑わう光景が明らかに増えつつある。物価の高騰や家計節約志向のなかでも外出制限や営業時間制限など各種制約が撤廃されたことも重なり、人々の外食回帰の流れは緩やかながらも増加傾向にある。新型コロナの流行時期に子どもや高齢者を伴う外出頻度は少なくなっていた反動もあり、『普段使いの店舗』より『特別感のある店舗』を求める傾向が強くなっているのではないか。非日常としての価値を持つ店舗が選ばれ、安いだけの価値しか持たない店舗は消費者に選択されなくなったともいえる。外食の回数が月4回から1回となればそれは貴重な機会で、『せっかくだから少し高くても美味しくて家族が喜ぶ店舗を選びたい』という傾向が強くなる。

 希少だからこそ、カジュアルなガストではなく、多少高くても価格相応のロイヤルホストが選ばれる。すかいらーくグループも脱カジュアルを目指して客単価の高い新ブランドの店舗展開を急いでいるが、個人的な意見となるが、ガストで1000円以上支出するなら他チェーンに行こうという客層のほうが多いのではないか。実際、東京都内ではガストよりロイヤルホストのほうが混んでいるというシーンをよく見かける」

失われた「ガスト=安い」という魅力

 また、外食業界関係者はいう。

「ファミレスに限らず外食チェーンは軒並み値上げを行っており、ガストも例外ではなく、かつては399円の『目玉焼きハンバーグ』に象徴された『ガスト=安い』という魅力が失われた面はある。たとえば人気メニューの『デミたまハンバーグ』は780円と、800円に迫る価格になっており、数多ある外食チェーンのなかで『ちょっと高いけど高級感がある』でもなければ、『味はそこそこだけど安い』でもなく、中途半端な位置づけになってしまい、消費者に『ガストに行くなら他の店に行く』という行動を選択させてしまっている。また、店舗力の低下という本質的な問題も以前から指摘されている」