トヨタ・ハリアー、中古車の価格が新車を上回る異常現象…中古車市場、未曾有の品不足

 日本の自動車は右ハンドル車なので、中古車として海外に輸出される際、実は限られた国でしか販売・登録ができない。右ハンドル・左側通行を採用しているのは世界約190カ国のうち約25%しかないという。さらに、アメリカでは「25年ルール」によって、製造から25年を経過するまで右ハンドル車を含む並行輸入車の輸入ができない。25年を過ぎるとクラシックカーとして輸入することができる。しかし、ロシアにはこうした輸入規制もない。

中古車の世界でいうと、日本は夢のような国

 日本の中古車はコロナ禍以前から、もともと海外で人気が高かった。

「日本は中古車に対してシビアだから。例えば、走行距離が10万キロだったら過走行車という基準になるし、6~7万キロでも、やや過走行になる。ところが、日常的な走行距離が長い欧米では、10万キロでもローマイレージになる。日本の中古車は走行距離が少なくて、洗車ばかりしているから車体もきれいで、しかも値段は安い。そんな国はほかにない」(桑野氏)

 日本国内で販売されている中古車の安さについて、桑野氏はさらにこう語る。

「日本の中古車相場は、欧米の先進国に比べるとかなり安かった。例えば、クラシックのポルシェやフェラーリも、今でこそ日本でもかなり高くなって1000万円を超えているが、10~15年ぐらい前は、世界的な相場で700~800万円していたポルシェが日本では100~200万円で買えた。そんな値段でポルシェとかフェラーリを買えるのは日本しかなかった」(桑野氏)

国内の中古車市場、これからどうなる?

 神領氏は、国内における中古車価格の値上がりピークは打ったと話す。

「価格はまだそれほど落ちてはいないし、値落ちも緩やかだ。ただ、メーカーも去年より今年は生産できるだろうという見立てであり、一部人気車の中古車の価格高騰はもう少し続くだろうが、そういう車種もこれから減ってくるのではないか」

 中国はゼロコロナ政策を転換し、経済の正常化に向けて動き始めた。

「コロナ禍というのは100年に1度ぐらいの話なので、なかなか予測できないところがある。新車を生産・販売すれば流通は増えるだろうと思われがちだが、それが以前のように潤沢にユーザーの手に渡っていくには、やはり少なくとも1年半ぐらいのタイムラグがあるはずだ。供給不足がすぐに解消されることはおそらくないだろう」(桑野氏)

 車検が切れるタイミングで車の買い替えを考える人は多い。

「新車の場合、今はだいたい、車検の1年前に買い替え話を始めないと、うまく車検に間に合わないといわれている。ただ、車検が切れて納車されない空白期間があっても、ディーラー側は代車を用意している」(神領氏)

 現在の新車・中古車不足のなかで、ユーザー側の自衛手段は、早めに買い換えを検討するということくらいかもしれない。

(文=横山渉/ジャーナリスト)