Zホールディングスは16日、傘下のヤフーとGYAOが運営する動画配信サービス「GYAO!」を3月いっぱいで終了すると発表した。有料版の「GYAO!ストア」も同時に終了し、購入していた動画が視聴できなくなるほか、オリジナル番組はサービス終了後に視聴する手段がなくなるなど波紋が広がっている。
「GYAO!」は、2005年に前身の「GyaO」(当時はUSENが運営)として開始された国内動画配信サービスの草分け的存在。映画やドラマ、アニメなどの無料配信で人気を博し、近年は人気ボーイズグループのJO1やINIを生み出したオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』(通称:日プ)の独占配信で多くの視聴者を集めた。
そのほかにも、漫才コンテスト『M-1グランプリ』の敗者復活投票などの関連番組を独占配信し、木村拓哉の『木村さ~~ん!』をはじめとしたオリジナル番組、櫻坂46の冠バラエティー番組『そこ曲がったら、櫻坂?』(テレビ東京系)の独占見逃し配信などでも親しまれてきた。
MMD研究所が昨年発表した「2022年8月動画配信サービスの利用動向調査」によると、GYAO!は利用経験者の多さでNetflixやABEMAに次ぐ順位となっており、HuluやU-NEXTを上回るなど、国内動画配信サービスとしてはトップクラスのはずだった。しかし、Zホールディングスは13日に同じ傘下のLINEのライブ動画配信サービス「LINE LIVE」の終了を発表し、今後は「LINE VOOM」という縦型ショート動画投稿サービスに注力するなど動画コンテンツの統廃合を進めており、その流れで「GYAO!」も終了が決定したとみられる。
また、最近はNetflixやAmazon Prime Videoが圧倒的な資金力で豊富な映画やドラマ、オリジナルコンテンツを提供し、国内のテレビ番組はTVerの一人勝ち状態となったことでGYAO!の存在感が希薄化。世間的な潮流としてはTikTokに代表されるショート動画が流行しているため、GYAO!のようなサービスは将来的な伸びが見込めなくなったと判断された可能性もあるようだ。
長らくネットユーザーに親しまれてきたサービスの突然の終了決定に驚きの声が広がると同時に、いわゆる「サ終(サービス終了)」をめぐる混乱も起きそうな気配だ。
GYAO!で見逃し配信が実施されていた『吸血鬼すぐ死ぬ2』『ブルーロック』など10本以上のアニメ作品はサービス終了に伴って最終回まで配信されない可能性が高く、先述した『そこ曲がったら、櫻坂?』などのように独占見逃し配信をしているテレビ番組は現状のままだとネット視聴する手段がなくなる。
さらに、木村拓哉が出演する『木村さ~~ん!』や木梨憲武の『木梨の貝。』などのオリジナル番組はGYAO!のサービス終了と共に過去の配信回も含めて全消滅するとみられる。また、有料版の「GYAO!ストア」でレンタル購入した映画などはサービス終了後に閲覧できなくなるため、新規レンタルは2月13日をもって受け付け終了となることがアナウンスされた。
これまでも電子書籍配信サービスなどの終了で「サ終によって購入した漫画がすべて読めなくなる」といったトラブルが起きたことはあったが、国内大手動画配信サービスの終了は史上初ともいえるもので、ネット時代におけるさまざまな課題や教訓を残すことになりそうだ。