そして、AIもだんだんと時代の流れや作業の変更などにより劣化していくものなので、新しいデータを投入してどんどんアップデートしていく必要があります。こうしたリスキリングをしていくことが、今後のエンジニア、データサイエンティストの課題となってくるでしょう」(同)
かつて2000年ごろにも職場にコンピュータが導入され、Word、Excelなどのソフトが一気にビジネスの現場で利用されるようになった。こうした便利なソフトが登場したものの、大々的に人間の職が奪われることはなく、むしろ仕事は効率化し楽になった。エンジニアの世界でも、AIの台頭によって仕事が楽になるかもしれない。
こうしたITの変化は業界のみならず、教育の現場にも影響を及ぼしている。学習指導要領の改訂により、2020年から小学校、21年から中学校、22年から高校でプログラミングの授業が必修化して世間の関心を集めた。なかでも、小学校の授業内容に注目してほしいと神崎氏は語る。
「小学校のプログラミング授業では、アメリカのMITメディア・ラボ開発の『Scratch』というプログラミング言語を用いて学習することが多いです。Scratchでは、コードを書くことなく、予めコードが組み込まれたテキスト文章のブロックをドラッグ&ドロップの操作で組み合わせて、プログラミングを行います。『右に進む』『90度回転する』といったブロックをつなげて、画面上でロボットを動かしたり、アニメーションを作ったりしてプログラミングの一連の作業を学ぶんです。そのためノーコードのプログラミング的な思考は小学校である程度身に付くわけです。
こうしてプログラミングの大まかな流れを学んだ子どもたちが、中学校、高校でより細かいプログラミングの知識を学んで、いずれは社会人になります。これはつまり、ある程度プログラミングの知識がある人々が社会に出ることを意味します。一昔前は『文系はプログラミングに向いていない』という考え方もありましたが、そうした考え方はすでに古く、着々と新しい世代に向けての準備は進められているんです」(同)
ITを取り巻く環境は急速に変化が進むなか、AIを活用しつつも、それにとらわれすぎない業務改善が求められるという。
「AIがどこまでのことをできるのか、これを見極めることが肝要になってきます。我々が普段、Word、Excel、PowerPointなどのソフトがどのような特徴を持って、どんな仕事に適しているかを理解して利用しているのと同じように、業務で使うAIの概要を把握しなければ、当然それを使いこなすことはできません。経営者やプロジェクトリーダーはもちろん、エンジニア一人ひとりが理解していくべきことですね」(同)
AIの発達によって、ここ数年でガラリと変わったIT業界。そんなAIの特性を理解して活かしていける人材こそが、業界で重宝されていくのだろう。
(取材・文=文月/A4studio)