正規雇用の公務員を減らすというのは、自治体の財政難を解消するために必要な対策だというのは理解できるが、公共サービスである図書館運営の人件費は優先度が低いと判断され、正規職員の人員が減らされてきたのだ。
「総務省の『令和2年地方公務員給与実態調査結果』によると、2020年の段階で正規職員の年収は644万円程度だったのに対し、非正規職員の年収はなんとたったの201万円程度と推計されます。もちろん正規職員は週5日で働くところを、非正規職員は週2、3日という方も少なくないでしょうが、いずれにしても非正規職員の賃金は正規職員の3割ほどの賃金ということです。自治体にとっては財政コストを下げられるメリットがありますが、こうした背景があるため図書館の非正規職員として働く人々が生活に困窮してしまうのです」(同)
ちなみに、2021年度の文科省の「社会教育調査」によると、4万3865人の図書館員のうち3万4399人と約8割が女性で、そのうち約8割が非常勤もしくは指定管理者の職員という数字となっている。司書の非正規雇用の多くが女性という現状は、どういった要因で生まれたのだろうか。
「1987年の社会教育調査を見ると、図書館の非正規割合は10%に過ぎません。それが今は8割です。しかも女性が大半を占める、つまり非正規化は図書館員の女性職種化を伴って進展してきたわけです。この背景にあるのが、男性が主たる生計維持者とみなされ男性が稼いで家族を支えるという、日本型雇用システムが関係しているのでしょう。女性のパート労働は家計補助とみなされてきたので、非正規職種化は低賃金の女性職種化してきました。つまりこれまでの非正規雇用は、たとえば夫の扶養内で稼ぎたい女性などを想定して低賃金で雇っていたわけです。しかし、今は夫婦共働きの家庭や経済的に自立したいという女性も増えています。ですから扶養内で稼ぐという層を雇う前提に産業を組み立てること自体が、時代にそぐわなくなってきているのではないでしょうか」(同)
今回の署名運動が、非正規雇用されている司書たちの労働環境改善のきっかけになることを願いたい。
(文=A4studio)