ですが、2010年代に入り、スマホの普及と共にSNSが爆発的に広まった後は、SNSというひとつのサービスに多くの人々が集まりました。情報収集の手段としては便利すぎるので、若者からすれば基本的にSNSだけで十分なんです。ですが、SNSは情報が自動的に流れてくる『受け身のメディア』なので、自分からネット上で情報を辿っていく必要がありません。そのため情報を積極的に精査していく傾向は下がったと感じますね」(同)
ツイートの投稿主は、「情報を見つけたからそれで終わりじゃないんだよと言ったらみんな目をそらす」という投稿もしていた。情報を深く検索することは、今の若者たちにとってあまり関心がないことなのか。
「検索上位で得られる情報で満足しがちな面はあるように感じます。若者たちからしてみれば、『これでだいたいわかるし、ここからさらに何を調べろというの?』と疑問を抱くようですね。先述したSNSの特徴も相まって、過去を掘り返す行為が若い子にとってあまり興味を持てなくなったのかもしれません。
SNSで重視されるのは情報の鮮度なので、SNS慣れした世代は出来立てホヤホヤの情報を手に入れることには長けているんです。ただSNSは新たな情報を集めるのに適したメディアではあるものの、グーグルなどの検索エンジンのように積み重なった情報から任意の情報を抜き取ることには不向き。結果的に『表面的な情報だけで問題ないのでは?』という思考にいきついてしまうのではないでしょうか」(同)
こうした情報を深く検索する能力の低下が、卒論執筆には如実に影響が出ると高橋氏は指摘する。
「現在、多くの大学生は、卒論で初めて『検索スキルを問われる場面』に立たされています。彼らはそれまでSNSや検索上位のサイトを中心に気になる情報を得てきており、普段の生活レベルではそれで十分だったのでしょう。
しかし卒論となると一次情報や、より深い専門知識を必要とするので、それだけでは不十分。特に検索上位のサイトというのは、あくまで検索サービスのアルゴリズムに沿っており、検索したキーワードに有用な情報が多い可能性が高いと判断された情報というだけ。『万人が物事のあらましを理解できる広く浅めな情報』が多く、しっかりと根拠のある参考文献にできる可能性は低いです。
私は学生に対して『ネット検索の上位に来る情報だからといって、必ずしも正確性が高かったり、専門性が高かったりするわけではありません』と釘を刺しています。あくまでSEO(検索上位に表示させるようサイト内の設計や記述を調整すること)対策がしっかりしているからこそ上位に表示されるだけなので、鵜呑みにしてはいけないんです、と」(同)
では、若者が検索能力を上げるにはどうしたらよいのだろう。
「基本的なことですが、異なるメディアで情報をいくつも見比べたり、新聞社といった情報発信の精度が高いメディアを自分なりに参考にしたりすることですね。ですが、一番は『身を置く環境で情報精査の必要に迫られる』ことだと思います。それは大学だったり、初めての職場だったりするでしょうが、まわりから受けた指摘を受けとめ、その重要性に気がつき、情報の比較と精査の意識を持つことが一番の近道です。
今の社会では情報の鮮度が重視視されているので、新しいネタに関して高い検索能力を持つ若者の存在は貴重です。しかし、デマ情報を誤読してしまって、それが一気に拡散し、社会問題になることも多くなってきました。そんな社会を生き抜くうえで、情報の質を高める検索能力を訓練することはデマに踊らされないことにも直結するので、ぜひ若者のみなさんには心掛けてみてほしいですね」(同)
(文=A4studio)