配達の代行に多額の出費を重ねている出前館だが、なぜここまでの無茶を続けられるのかが気になるところだ。
「それを説明する前に、まずは出前館の株を持っている会社について説明しましょう。16年頃からシェアリングデリバリーを始めた出前館ですが、実はこの頃からメッセンジャーアプリで知られるLINEと資本業務提携を始めます。20年頃になると、LINEは出前館にグループで総額300億円もの出資を決定し、約36%の株を持つようになります。
そして同時期にLINEが10%出資している投資組織、未来FUND有限責任事業組合も25%の株を持つようになり、瞬く間にLINEとつながりを持つグループが出前館の株式の60%超を保有することになりました。さらに、同グループは出前館に取締役を3人、監査役を1人派遣して、実質的な子会社にしてしまったのです」(同)
出前館はそんなLINEから得た資金のうち、なんと180億円を1年で使い、配達代行業務に一気に力を入れていったという。だが、こうした資金運用がさらなる企業たちとの関係につながっていった。
「成長のために多額な資金を投入することで、資金を一気に使ったため、出前館は21年9月に公募で約830億円もの増資に踏み切ります。このとき約333億円をZホールディングス(ZHD)、約180億円をNAVERが引き受けるのですが、このZHDはLINEの親会社であり、NAVERはZHDの筆頭株主であるAホールディングス(AHD)の株式を50%持つ親会社となっています。さらにAHDの株式を50%持つもうひとつの親会社がソフトバンクです。
出前館が配達代行業者に多額の資金を投入し続けている理由は、NAVERとソフトバンクという2大企業のグループの子会社となり、彼らから多額の出資を受けているからにほかなりません」(同)
ここで気になってくるのは、利益を生み出せていない出前館に、なぜ親会社がこれほどの出資を続けているのかという点だ。
「出前館の事業を通じてさらなる事業展開を見据えているからでしょう。というのも出前館は今、飲食店のみならずコンビニなどの配達を行っているのですが、これは欧米などで流行りつつある、日用品を30分以内に配達するクイックコマースという業務形態のテストだといわれています。つまり、親会社はコロナ禍で利用者が急増した出前館を通して、ユーザーを次なるビジネスへ誘導しようとしているのでしょう」(同)
NAVERとソフトバンクにとって、利益の上がらない出前館への多額の出資は、次世代のインフラにもなりえるビジネスへの先行投資という側面もあるようだ。
(文=A4studio)