愛内里菜、芸名使用差し止めは「公序良俗反し無効」 「能年玲奈は?」と話題に

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「Rina Aiuchi=愛内里菜=オフィシャルウェブサイト」より

 歌手の愛内里菜が専属契約を結んでいた事務所「ギザアーティスト」に無断で芸名を使って活動しているとして、同事務所が芸名の使用差し止めを求めた訴訟の判決が8日に東京地裁であった。無期限に芸名使用を禁じた契約について「無効」と判断され、事務所の請求が棄却された。これが報じられると、SNSで「能年玲奈」がトレンドワード入りする事態となった。

 愛内は芸名「愛内里菜」で2000年にデビューし、同年にリリースした「恋はスリル、ショック、サスペンス」をはじめとしたアニメ『名探偵コナン』(日本テレビ系)とのタイアップ曲でブレイク。2010年に病気療養を理由に一度引退し、2015年に復帰してからは「垣内りか」「R(アール)」などの別名義を使っていたが、昨年3月から再び「愛内里菜」として活動したことで、事務所側が提訴していた。

 訴状などによると、愛内と事務所は1999年に専属契約を締結。その中に「契約期間中はもとより契約終了後も、芸名を事務所の承諾なしに使ってはいけない」との条項があった。だが判決では、一度引退した2010年に契約は終了していると認めた上で、「事務所が育成のために投じた資本を回収するなどの狙いがあったとしても、何の代償措置もないまま、無期限に芸名使用を認めるかの権限を(事務所に)持たせることまでを正当化するものにはならない」と指摘され、「社会的相当性を欠く」として無効だと判断された。

 また、著名人が名前や肖像で生じた利益を独占できる「パブリシティー権」についても、契約条項では「原始的に事務所に帰属する」とされていたが、判決では「合理的な範囲を超えて愛内さんの利益を制約するもので、公序良俗に反する」として、契約は無効とされた。

 事務所側は控訴する予定だというが、これまで芸能界で当然のようにまかり通っていた「契約を根拠とする退所後の芸名使用の中止」の訴えが裁判で完全に「無効」だと判断された衝撃は大きい。

 この話題が報じられると、Twitterなどで「え、じゃあ能年玲奈はどうなるんだろう」「のんちゃんも名前取り戻せる!?」「能年玲奈が本名なのに名前使えないのはもっとおかしい」といった声が多くあがり、本来は関係ないはずの「能年玲奈」がトレンドワード入りを果たした。

 現在「のん」として活動している能年は2010年に女優デビューし、ヒロインを務めた2013年のNHK連続テレビ小説『あまちゃん』で大ブレイク。ところが、週刊誌で「事務所に無断で個人事務所を設立していた」「契約問題をめぐって事務所と衝突している」などとトラブルが報じられ、休業状態を経て2016年に独立。同時に「のん」に改名し、「能年玲奈」は本名であるにもかかわらず芸能活動で使用できない状態になっている。

 改名の理由については「『能年玲奈』が商標扱いとなっていて、使用には事務所の許可が必要されたため」と複数のメディアで伝えられているが、少なくとも特許庁管轄の「特許情報プラットフォーム」で調べる限りは商標登録されていない。能年と事務所がどのような契約を結んでいたのかは不明だが、愛内のケースでは「マネジメント契約が終了した時点で無効」「契約終了後も事務所が芸名使用の権限やパブリシティー権を持つのは公序良俗に反する」と判断されている。能年と前事務所の専属契約が終了しているのは明白で、司法で争えば「名前を取り戻せるのではないか」と話題になっているようだ。

 能年に限らず、事務所からの独立や移籍と共に改名を余儀なくされた芸能人は多い。今回の判決をきっかけとして、その潮目が変わるかもしれない。