Twitterの大量解雇、なぜ日米で受け止め方が異なる?マスク氏の買収の狙いとは

Twitterの大量解雇、なぜ日米で受け止め方が異なる?
イーロン・マスク氏(「Getty Images」より)

 ツイッター社が揺れている。その震源は、10月31日付で最高経営責任者(CEO)に就任したイーロン・マスク氏の存在だ。マスク氏は就任早々に取締役を全員解任。さらに全世界で約7500人ともいわれる従業員のうち、半数近い3700人にリストラの通知をしたというのだ。

 日本でもその是非について大々的に報じられた大量解雇だが、アメリカでは少し受け止められ方が違うという。在米のキー局社員が、次のように説明する。

「転職文化が根づいているアメリカにおいては、今回の大量解雇に違法性があり問題だというよりも、その強引な手法に批判が集まっています。急にメールだけで解雇を告げるのはヒドイという意見が目立ちました。そもそも、ツイッター社自体が2年連続の赤字で、昨年は赤字が約290億円に跳ね上がっています。アメリカ国内でも経営の妥当性が疑問視され、『従業員が増えすぎたのでは』という論調もありました。

 つまり、なんらかのかたちでメスを入れる必要があったわけですが、マスク氏が独断で強引にそれを進めたことを問題視しているわけです。マスク氏はもともとSNS上で『炎上王』としても知られていますが、ツイッター買収に関しても批判の声も強く、その人気に陰りが見られていました。要は解雇という事実よりも、マスク氏の人格、その手法に疑惑の目が向けられているのがアメリカです。これが日本との違いでしょう」

 仮に日本法人において、従業員とツイッター社における合意退職がなされなければ、不当解雇になるのではないかとの論調も見られる。すでに今回の解雇問題について、専門の無料相談を行う弁護士事務所や労働組合なども出てきているほどだ。

 だが現状では、少なくとも解雇によるトラブルは日本では起きないのではないか、との見方が強いという。外資系コンサルタントが、次のように解説する。

「そもそも外資系企業の場合は、こういった人員整理でのトラブルに非常に慣れています。いかにして訴訟まで進めないかというノウハウもあります。具体的には、割増退職金を通常よりも多めに提示するというもの。すでに役員4人に退職金200億円超が支払われることが報道されているように、今回人員整理での退職となる従業員にも数千万円単位の退職金が支払われるはずです。さらに、外資系で働く人のマインドとして、転職へのハードルの低さもあります。そういった背景からも、日本の従業員たちも労力をかけて揉める、ということは現実的に考えにくいわけです」

イーロン・マスク氏がツイッター社を買収した狙い

 そもそもツイッター社内における日本支社の役割は、どのようなものだったのか。そして、なぜ今回の大量解雇に至ったのか。これらを読み解くと、マスク氏の狙いが見て取れると、前出の外資コンサルタントが続ける。

「そもそも、TwitterというSNSは、世界でもアメリカと日本に半数近くのユーザーが固まっています。特に米国では、マスク氏やドナルド・トランプ元大統領といった有名人が利用することで、ツイッター社自身の広報としての機能も持つなど、確かな存在感がありました。

 ただし、開発などを含む本社機能はアメリカに集中していました。確かに日本は相性の良い大きなマーケットでしたが、日本支社が重要な役割を果たしていたとはいえません。そもそも、マスク氏の買収した最大の狙いは、ツイッター社が持つ技術力と開発力です。つまり、ツイッター社の技術をAIやビッグデータとして活用し、テスラやスペースXにも生かしたいというのが心の内でしょう。マスク氏の中では、結果が出ていなかった広告営業や広報部門を中心に整理するというのは至極合理的な判断だったと見てとれます」

 果たして、今後はどんな展開を見せるのか。全国紙経済部記者は、「解雇については今から具体的な話し合いが進められていく」と述べる。

「報道各社もツイッター社の日本社員に接触して取材を試みましたが、取り付く島もない感じでした。その理由は、どうやらまだ退職金を含む退職条件などの具体的な話し合いが行われていないからのようです。現状では、リストラの対象者が、日本では広報関連や広告営業が中心になりそうだとの見方が強く、同社の根幹をなす開発部門やエンジニアなどのリストラは限定的になるのでは、という声も出ています。

 正直、開示された情報も限定的で、外資系企業だけに取材も思うように進んでいないのが実情です。いずれにしても、会社側も従業員も問題を長引かせたくないというのが本音でしょう」

 アメリカ本国では、一連の流れをみて広告出稿を取りやめる企業も続々と出てきている。世界2位のユーザーがいる日本においても、その余波はまだまだ広がりそうだ。

(文=Business Journal編集部)