最後に、サッカー界全体でW杯のプライオリティが年々下がっていることも大きな理由の一つだろう。プレミアリーグを筆頭とした欧州リーグの価値が高騰し、自ずと優秀なスタッフも集う。当然、集まってくる金も桁違いとなっている。
「前提として、昔と異なり、世界のサッカー界におけるW杯の優先順位が下がってきているのは間違いありません。その理由は、チャンピオンズリーグやプレミアリーグといった欧州サッカーの価値が年々上がり続けていること。特にプレミアリーグの放映権料は1兆6100億円を超え、この数字は10年前の2倍に伸び、今や全スポーツのなかでもっともビジネス価値が高いコンテンツに数えられるほどです。
欧州全体の傾向として、W杯よりもプレミアリーグやラ・リーガ、ブンデスリーガを含む自国リーグへのほうへの注力が強まっています。野球で例えるなら、WBCとメジャーリーグのような関係です。特に監督人事がそれを端的に表しています。フランスのデシャンやオランダのファンファール、スペインのルイス・エンリケ、ブラジルのチッチといった一部の例外を除けば、世界的な名将は今や代表監督には就かなくなっています。クラブと各国のサッカー協会のパワーバランスも、クラブのほうが強くなっているのが現状です」(スペイン在住の代理人)
とはいえ、いざ本大会が始まると“それなりに”盛り上がるのが日本の国民性でもある。大会が始まるとメディアの報道も増え、脚光も浴びるだろう。ただし、一定の盛り上がりを見せるためには、結果と視聴者を惹きつける内容も求められる。
森保監督と田嶋会長体制への期待値は極めて低いと言わざるを得ないが、W杯では下馬評が低かったチームほど結果を残した歴史もある。4年に一度の祭典だけに、再び日本サッカーへの注目度が高まるような躍進を見てみたい。
(文=中村俊明/スポーツジャーナリスト)