パチンコ業界が、メインの客層である高齢者の集客に苦戦している。また、都心部や繁華街ではテレワークの普及で来店客数が落ち込むなど、苦境が続いている。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると、遊技機1台あたりの平均売上はコロナ前と比べて20~30%ほどの低い水準で推移している。
東京商工リサーチの調査によると、今年のパチンコホールの倒産は8月までの時点で20件と、すでに昨年を超えており、廃業も増加している。パチンコ業界の現状について、東京商工リサーチ情報本部情報部課長の後藤賢治氏に9月中旬に話を聞いた。
今年8月までのパチンコホールの倒産は20件に達し、すでに2021年の18件を超えている。さらに、9月も4件の破綻が判明し、2014年(32件)以来、8年ぶりに30件台に達する可能性もある。
今年1月以降はパチスロの5号機完全撤去の影響で売り上げが減少、射幸性の低い6号機への入れ替えもホールの負担になっている。11月からはスマートパチスロの導入に伴い、システム変更や新規則遊技機への交換も、経営体力の落ちたホールを苦しめる要因となる。
「コロナ禍による客足の減少に続いて、パチスロの5号機から6号機への入れ替えもパチンコ業界を苦しめました。今年、ホールの倒産が急増している背景には、そうした要因があります」(後藤氏)
増えているのは倒産だけではない。全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)のデータによると、2021年の廃業店舗数は637件であるのに対し、新規店舗数はわずか37件。営業店舗数も同年1月の8231件から、同年12月には7637件と減少している。今年に入っても廃業店舗数の増加傾向は変わらず、1月から8月までで570店舗となり、前年同期の446店舗を大きく上回っている。
この状況について、後藤氏は「なかには、複数の店舗を一度はすべて『廃業』とし、負債を整理して、残ってしまったら『倒産』に移行するケースもあると思います」と語る。
後藤氏が首都圏のホールの総務部長に取材したところ、「コロナ禍で高齢者の来店数の回復が遅れ、パチンコ台の稼働に影響が出ている」一方で、「利便性と効率性を高め、コロナ禍よりコストを大幅に削減できた」といった話があったという。
資金力のあるホールはドル箱を積まない計算機を導入するほか、セルフ式の景品カウンターを整備するなど、コスト削減に務めて経営の合理化を図っている。一方、資金力のないホールは効率化の遅れから人員削減も進まず、コスト増で経営が悪化するという負のスパイラルに陥っている。
「大手傘下で資金力が豊富なホールの場合、業務効率化で人件費などのコストを削減することで、売り上げが回復していなくても利益を確保しているケースがあります。しかし、資金力のないホールは現状維持が精一杯で、有効な施策を打てないまま、人件費や電気代などのコスト増が経営を圧迫する状況が続いています。その結果、倒産や廃業を余儀なくされるケースも出てきています」(同)
また、今年1月末のパチスロ5号機から6号機への入れ替えも経営圧迫の要因となっているうえに、6号機は出玉性能が抑えられることでユーザー離れが懸念されている。
「資金力のあるホールでは早い時期に6号機に入れ替えたケースもありますが、資金力のないホールは期限ギリギリまで5号機を使っていたり、この入れ替えを機に倒産や廃業を選択したりしたケースもあります」(同)
パチンコ業界が期待するのが、玉やメダルに触らなくても遊べるスマートパチンコ・スマートパチスロの導入だ。スマートパチスロは今年11月、スマートパチンコは2023年1月から導入予定だ。スマートパチスロは現行の規格より射幸性が高いことから、パチンコ業界ではパチスロ人気復活の起爆剤として期待が高まっているという。
「年末年始の稼ぎ時に、スマートパチスロを導入したホールとそうでないホールでは、来店客数に大きな差が出るかもしれません。スマートパチスロは淘汰を加速する“諸刃の剣”にもなりかねないのが実情です」(同)
パチンコホールの苦境は、まだ続きそうな気配だ。