国債市場は以前も不調になりかけたが、これを救ってきたのはオイルマネーだった。景気拡大の恩恵を受けたオイルマネーは、米国をはじめ西側諸国の国債を積極的に購入した。ロシアのウクライナ侵攻に起因するエネルギー価格高騰のおかげで石油輸出国機構(OPEC)の今年の原油輸出収入は9070億ドルとなる見込みだ。2000年以降の年間平均5770億ドルを大きく上回るが、「以前のオイルマネーブームのように西側諸国の金融市場は恩恵を受けることはないのではないか」という気になる指摘がある。
西側諸国がロシアの外貨準備(ドルとユーロなど)を凍結したからだ。「人権問題などで批判を受けやすいペルシャ湾岸諸国は将来、ロシアと同じように虎の子の金融資産が奪われてしまうことを恐れ、西側諸国への投資を控える」というのがその理由だが、足元の状況はこの指摘が正しかったことを証明しているのかもしれない。世界の国債市場の歴史的な不調を目の当たりにして、投資家心理は2008年の金融危機(リーマン・ショック)以来、最低の水準になったといわれている。投資家からは聞こえてくるのは「世界経済がリセッション入りするのは確実であり、問題がその深度だ」との嘆き節ばかりだ。
世界の金融市場の基盤とも言える国債のバブルが崩壊するような事態になれば、世界規模で流動性ショックが起きるのは確実だ。未曾有の金融危機が襲来してしまうのではないだろうか。
(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)