31年続いた「デフレの時代」、すでに終焉か…住宅地と物価、同時上昇の背景

住宅地と物価、同時上昇の背景(「gettyimages」より)
(「gettyimages」より)

 9月20日に国土交通省より2022年の「基準地価」が公表されました。基準地価は7月1日時点での全国2万カ所の地価を、近隣の取引事例などを参考に調査公表するものです。1月1日時点での地価を調査する「公示地価」とともに、不動産価格の動向を見る指標とされています。

 商業地や住宅地などに分けて公表されます。商業地は3年ぶりにプラスとなりましたが、今回特徴的なのが、住宅地が前年比で0.1%の上昇となったことです。住宅地が前年比でプラスとなるのは、なんと1991年以来31年ぶりのことです。新型コロナの感染拡大でリモートワークが広がったことで戸建て住宅を購入する機運が高まり、住宅地の地価を押し上げたようです。地方中核都市や大都市圏の近郊で特に上昇しています。それだけでなく、都心部や駅近の高額マンションも売れています。長引く低金利で住宅投資がしやすいことが大きな要因となっていると考えられます。高額の住宅ローンを組みやすくなったほか、投資目的での購入も増えています。

 同じ日に総務省からは、8月の消費者物価指数が公表されました。天候の状況に左右される生鮮食品を除いた項目で、対前年比が2.8%の上昇となりました。この上昇幅は、1991年以来31年ぶりの水準です。2020年と2021年はいずれも年間での平均がマイナス0.2%でしたが、今年の4月から上昇幅が2%を超えるようになりました。

 原因は、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の上昇と、為替相場が円安ドル高に推移したことによる輸入品の上昇です。値上げは徐々にいろいろな商品に広がっていますので、今後はさらに上昇していくことでしょう。長い間デフレが続き、なかなか値上げに踏み込めない事業者が多かったのですが、このところは値上げが相次ぎ、しやすい雰囲気にもなっています。

カギは日銀による金融緩和政策

 同じ日に公表された、まったく異なる価格指標が、ともに「1991年以来31年ぶり」となりました。この年がどんな年だったのか気になります。

 1991年は和暦では平成3年。バブル相場で日経平均株価が最高値の3万8915円をつけたのが1989年の年末ですので、バブル崩壊2年目ということになります。証券市場では、大手証券会社が大口投資家に損失補てんをしていたことが発覚し、信頼を失いました。

 海外ではソビエト連邦が崩壊しました。2月にはアメリカを中心とした多国籍軍とイラクの間で湾岸戦争が起き、石油価格が急騰しました。戦争によってエネルギー価格が上昇した点など、今と似ているかもしれません。もっともこの時は、戦争が早期に収束したために石油価格もすぐに安定しました。株式相場はすでにバブル崩壊で下落していましたが、この年の経済成長率は3.4%でした。翌92年から0~1%程度の成長率が続くようになり、「デフレの時代」となったのです。

 今回、2つの指標が「31年ぶり」となりましたが、それは「デフレの時代」がずっと続いていたためです。今年に入り、地価や物価が上昇し、「デフレの時代」が終わったといえるかもしれません。しかし、「インフレの時代」を迎えるのかはまだわかりません。地価の上昇も、物価の上昇をもたらしている円安ドル高も、日銀による金融緩和政策が大きく影響しています。低金利が続くことで不動産投資は活発化しますし、海外との金利差で為替相場は円安ドル高へ推移しています。日銀がいつまで金融緩和を続けるのか、そしてそれをやめた時にどうなるのかが注目されます。

(文=村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー)