90年代に「愛の才能」「DNA」「1/2」などのヒットを飛ばしたことで知られるシンガー・ソングライターの川本真琴が、音楽のサブスクリプションサービス(定額聴き放題)について「システムを考えた人は地獄に堕ちてほしい」などと発言して物議を醸している。
川本は20日に自身のTwitterで、歌手の七尾旅人がファンに向けて「生き残らせたい『推しミュージシャン』が居たら、コスト回収率の高いCDを一応買ってあげて(中略)サブスクでも聴きまくってあげると次作やアナログを出せる可能性が高まる」などと推しミュージシャンへの支援方法を説明した投稿をリツイート。
それに続いて、川本は「サブスクでの利益がどれだけ少ないかを知ってほしい」「サブスクというシステムを考えた人は地獄に堕ちてほしいと思っている」と記し、サブスクサービスの報酬の少なさについて恨み節を炸裂させた。
その一方、川本は「じゃあ、サブスクやめればというかもだけど、CDデッキを持ってない人も多くなって、どないしろという現実」と嘆き、解決策のない現状への歯がゆさを明かしている。
今年2月、川本はデビュー25周年を記念してソニー・ミュージック在籍時代の全音源のサブスク配信を解禁。当時は「配信の時代ですので、いろんな年代の方に気軽に聞いてもらえたらです!」と意気込んでコメントしていたが、それから約7カ月を経てサブスクへの考えが大きく変わったようだ。
現在、SpotifyやApple Musicなど月額1000円前後で聴き放題になるサブスクサービスが台頭し、スマホを通じて音楽を楽しむ人が急増している。とくに若年層は川本が指摘したように「CDを再生する機器すら持っていない」という人が珍しくない。音楽業界もこの流れは無視できず、B’z、サザンオールスターズ、松任谷由実などの大物も含めて多くのアーティストがサブスク解禁に踏み切っている。
しかし、以前からサブスクサービスは「アーティスト側への配分率が少なすぎる」と指摘され、国内外で問題視されてきた。昨年時点で、1再生あたりのアーティスト収入の平均単価はSpotifyが0.27円、Apple Musicが0.81円ほどと推定されている。この金額では、よほどの大物ミュージシャンや超人気曲でもない限りはまとまった収入を得られそうにない。
山下達郎は6月のYahoo!ニュースのインタビュー記事で「表現に携わっていない人間が自由に曲をばらまいて、そのもうけを取っている」「それはマーケットとしての勝利で、音楽的な勝利とは関係ない」と断じ、サブスク配信について「おそらく死ぬまでやらない」と宣言している。
だが、先述したように音楽業界としてはサブスクの台頭を無視することはできない。サブスクを通じて過去の曲が利益を生み出したり、新たなファン層を獲得できたりといったメリットもあり、もはやサブスクに曲がないアーティストは「存在しないも同然」とされてしまいかねない時代だ。
今回の川本の発言に対し、ネット上では「サブスクは文化の破壊にほかならない」「サブスクのせいでどんどん音楽の価値が安くなっていく」「アーティストへの還元が少ないのが問題」などと理解を示す声が集まった。
その一方で「音楽好きにとってサブスクほどありがたいものはない」「サブスクがなかったら音楽を聴く人が減って業界がもっと落ち込むと思う」「サブスクのシステムは素晴らしいし何も悪くないでしょ、配分率が問題なだけで」といった“サブスク擁護”の意見も多く、賛否両論となっているようだ。
サブスクは音楽ファンにとって非常に便利なサービスだが、アーティストや音楽業界にお金が十分に還元されていると言い難い状況は今後の大きな改善課題になりそう。そういう意味でも、川本の本音のツイートは価値ある提言となったといえそうだ。