ある人が頼むと「厚かましいお願い」として断られることでも、別のある人が頼むとあっさり受け入れてもらえたりする。そこにあるのは「愛嬌」があるかないかの違いかもしれない。
論理的に話せるか、わかりやすく話せるか、といったことがコミュニケーションでは大事だとされる一方で、仕事でもプライベートでも、周りに敵を作らずに自分のやりたいことをすいすいと実現させていく人には、これらに加えて例外なく愛嬌がある。しかし、「愛嬌」は言語化しにくい。だから軽視されがちだし、「媚を売ること」と同一視され、嫌われていたりもする。
媚を売ることと愛嬌があることは、まったく違う。損得で相手を選別して近づいてくる人間を、人は敏感に見抜く。反対に私心なく、どんな相手にでも興味を持って近づいてくる人もいる。関心のベクトルが「自分の利益」ではなく「相手」に向いている人だ。「愛嬌がある人」とはそういう人である。
『仕事ができる人は知っている こびない愛嬌力』(リョウ著、KADOKAWA刊)は、「学歴やスキルよりも愛嬌力の方が仕事には不可欠」「どんな仕事であっても愛嬌力があればうまく回る」として、愛嬌とは何か、どう身につけるのかを解説していく。
もちろん、人それぞれ生まれ持った性格がある。ただ、愛嬌は日頃の習慣を変えることで身につくもの。性格を変えなければいけないのではなく、生まれ持った性格に愛嬌が掛け合わされていくと考えた方がいい。
愛嬌がある人と媚を売る人の最大の違いは、人間関係を「損得」で考えるかどうか。ギブアンドテイクの「テイク」がない人間と付き合わないのが前者だとしたら、後者は相手の立場は関係なく誰とでも付き合うし、(実際には難しくても)100%ギブの精神で人と付き合う。
営業で考えるとわかりやすいかもしれない。契約を取るまではマメに足を運んでいたのに契約した途端に来なくなる営業マンは、相手からはいい印象を持たれない。一方で、契約をとった後でも定期的に顧客に連絡をして相手にとって有益な情報を提供したり、状況を聞いたりする営業マンもいる。
当然、営業活動は「ギブアンドテイク」なのだが、テイクを受け取った後にその人の人間性があらわれる。営業と顧客である以前に人と人。そう考える習慣をつけることで愛嬌力は身についていく。
褒めること自体は簡単だが、効果的に褒めることは案外難しい。相手をやる気にさせる褒め方の秘訣は「人」を褒めることだ。
たとえば
「この資料、すごく見やすいね」
「○○さんが作った資料、すごく見やすいね」
どちらも意味としては同じだが、前者は「もの」を褒めて、後者は「人」を褒めている。当然、言われた方は気分がいい。
逆に、叱ったり注意するときは「人」ではなく「もの」を対象にする。
「○○さんが作った資料、まちがっていたので修正をお願いします」よりも「この資料まちがっていたので修正をお願いします」の方が、作り手が槍玉にあげられていない分、角が立たない。
これは「言葉尻の問題」と軽視すべきではない。いずれのケースも「仕事」と「人の心」のどちらに重きを置くか、という価値観があらわれるからだ。「愛嬌のある人」は後者。これもまた愛嬌力のある人の習慣なのである。
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本書では、愛嬌力がある人の習慣と愛嬌力を構成する9つの要素、愛嬌力を身につけることで起こる変化など、コミュニケーションで見落とされがちな愛嬌について徹底的に解説していく。
職場や学校での人間関係に悩んでいる人、自分が思っているよりも周囲からの評価が低い人、友達ができない人、仕事で結果が伴わない人は、愛嬌によって現状がガラッと変わる可能性がある。本来の自分のまま、少しだけ言葉や考えを変えてみるだけで、コミュニケーションは全く違うものになる。本書はそのことを教えてくれるはずだ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。