推し活ブームの裏でトラブル続出の実態…中高生の親が読むべき「推し活の教科書」

「『推しの魅力を他の人にも知ってほしいから』と、雑誌やライブDVDなどの内容を無断で投稿する人がいますが、これは著作権や肖像権を侵害する違法行為です。また、自分が投稿するのはもちろん、違法にアップロードされているコンテンツを観たり聴いたり、人に勧めたりなど、何らかの反応をしてしまえば、違法行為の助長につながります」(同)

 もう一つ、加害者になってしまうケースで多いのが「誹謗中傷」だ。

「悪意のあるアンチコメントだけでなく、『好きだから』『愛ゆえに』という気持ちが暴走して、推しを傷つけるような発言をしてしまう人もいます。自身の活動にSNSが欠かせないのは“推される”側のタレントも同じで、自分の評判をエゴサーチして誹謗中傷コメントを見つけた場合、書き込んだ人の情報の開示請求をする事例が増えています」(同)

違法な手段での推し活は「応援」ではない

 ここで挙げたような行為は、どれも法を犯す行為。違法だとわかってやっているのは論外だが、中高生の中には知らず知らずのうちに犯罪行為に手を染めてしまう人もいるという。

推し活に限った話ではないですが、親は子どもが興味のある対象について、ある程度理解しておく方がいいと思います。子どもが普段活動している環境でどんなトラブルが起きているかを親が知っておくだけで、我が子が犯罪に巻き込まれる危険性を大幅に下げられると思います。罪を犯している以上、『知らなかった』では済まされませんからね」(同)

 ただ、悲しいかな「みながやっているから大丈夫」「私一人がルールを破っても問題ない」など、違法行為に対する罪の意識が軽い人が、年齢を問わず存在しているのが現実だそうだ。万が一、我が子がルールを破っており、それを諭したときにこのような返答をされたら、親はなんと言えばいいのだろう。

「そんなときこそ、『なぜルールが定められているのか』『みながルールを守らなかったらどうなるのか』を、本書をもとに一緒に考えてみてほしいです。チケットの不正転売も違法アップロードも、それを享受して公式側にお金を落とさなければ、本来“推し”に入るべきだったお金が犯罪者のもとに入ってしまいます」(同)

 どんな“推し”たちも、ビジネスとしてコンサートやイベントを開催したり、グッズを販売したりしている。儲けがなければ経営は成り立たなくなり、活動を継続できない。お金をかけることだけが「応援」の方法ではないが、少なくとも違法な手段でライブに参加したりグッズを入手したりする行為は、一切「応援」に当たらないどころか、“推し”の活動を邪魔する行為なのだ。

「ほかにも誹謗中傷は、もし“推し”本人が目にすれば精神的なダメージを負い、活動を辞めるきっかけにもなり得ます。『自分一人だけ』と思っても、そういう意識の人が100人、1000人、1万人……といれば、大好きな“推し”が活動を辞めてしまうかもしれない。そこまで想像力を膨らませることができれば、ルールを守った“清く楽しく美しい推し活”が重要だと理解できるのではないでしょうか」(同)

 本書ではSNS上のトラブルのほか、イベント会場やその周辺の公共交通機関で起きがちなトラブルなども数多く紹介している。当事者はもちろん、推し活を楽しむ子を持つ親も必読の「推し活の教科書」と言えよう。