多くの人にとって終身雇用で一つの会社に定年まで勤めることはあまり現実味がない選択肢になった。となると人生設計や会社での働き方も見直すべき時に来ている。「終身雇用が終わった」ということは、「どんな上司についても、我慢してついていけば出世できた時代が終わった」ということだからである。
ついていっていい上司がいれば、さっさと逃げ出したほうがいい上司もいる(上司を選べるかどうかは環境次第だが)。「さっさと逃げ出した方がいい上司」からは、できる限り距離を置くのが賢明だ。
『いらない部下、かわいい部下』(新井健一著、日本経済新聞出版刊)によると「さっさと逃げ出した方がいい上司」の特徴は、「君のため」「教育のため」「会社のため」という名目で、部下の自尊感情を奪おうとすることだそう。
この種の上司には、そもそも部下を個人として認め、信頼し、尊敬しようという気がないため、パワハラを指摘されても当事者意識を持ちにくい。「おまえのために言っているんだぞ」「君の教育のために叱っているんだ」といったセリフで部下を従わせようとする上司は要注意。本当に部下のためを思っているわけではない。
逃げ出すほどではなくても「無視していい上司」も存在する。「無視していい上司」とは、付き合っても何のメリットもない上司だ。それを見極めるためには、上司に向かってこんな話をしてみるといい。
「いつかは独立して、起業したい」
「キャリアアップのために、若いうちは転職を経験したい」
話のネタは上の二つでなくてもいい。「自分のキャリアは今の会社を当てにしていない」ということを上司に示せればOKだろう。
こうした話をした部下を引き留めようとする上司は、付き合っていてもメリットはない。業務上の最低限のコミュニケーションは仕方がないが、それ以外のことに付き合う必要はない。
こういう人物は「ことなかれ主義」だ。自分の身の安泰だけが大事で、部下のキャリアなど眼中にはない。別の価値観でキャリアを積もうとする人を見ると、足を引っ張ろうとさえする。
「起業なんて絶対無理。やめとけ」
「結局はサラリーマンが一番」
「我慢してここ働いていれば、いつか報われるんだから」
こういったセリフを聞いたら注意した方がいいかもしれない。我慢して働き続けていれば報われた時代はもうとっくに終わっているのだ。
一方で、上の話題について、特に何の反応もないか、背中を押してくれる上司は、部下にとって、今の会社から離れても付き合える強い味方になる可能性がある。
「あっ、そうなんだ」
「いいじゃん!チャレンジしてみなよ」
こういう反応を返してくる上司こそ、付き合うべき上司だ。
ここでは部下から見た上司の見極め方を紹介したが、本書では上司の側から見て、どんな部下を評価したくなるのかについてもつづられている。それは、これまでは上司を立てていい気分にさせてくれる部下だったかもしれないが、今は「太鼓持ち」が評価される時代ではない。
会社での立ち居振る舞いを考えるうえで、本書から学べるものは多いはずだ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。