マッチングアプリ、なぜ低迷?TinderやPairs、新規利用者数が回復せず

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Match Groupの公式サイト

 コロナ禍の「出会いの場」のひとつとして、期待されたマッチングアプリ。実際のところ、利用者は増加したのだろうか――。マッチングアプリ「Tinder」や「OkCupid」「Pairs」などを手がける、世界最大級の「出会い系アプリ」運営事業者である米Match Groupは2日、投資家向けレターを発表し、最高経営責任者(CEO)のバーナード・キム氏が世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う自社マッチングアプリサービスの苦境について言及した。構想中だったメタバース事業の計画の見直しも発表した。

「新規利用者、パンデミック前に戻らず」

 同レターで、キム氏は「全体的な市場機会は依然として大きい」としながらも、「人々はロックダウンを乗り越え、普段の生活を送り始めているが、オンラインの出会い系サービスを試す意欲は、パンデミック前のレベルには戻っていない」と述べた。さらに「既存のユーザーからのエンゲージメントは高まっているものの、新規利用者を獲得することは依然として課題」と説明した。

 同グループが昨年6月、ARやAIを手掛ける韓国Hyperconnectを買収したことにも触れて、「私たちにとって最大の未開発の市場機会はAPAC(アジア太平洋地域)にある」と述べ、既存のサービスにライブストリーミングビデオ機能などを組み込み、新規ユーザーを獲得する方針を示した。

「メタバースの全体像、不確かな状況」

 同グループは昨年11月の第3四半期の決算説明会で、Hyperconnectなどの技術を活用し、アバターを用いたバーチャル空間をつくり、「現実世界での交流に近い形で、メタバース体験を実現する」との構想を表明していた。

 しかし、今回の投資家向けレターでキム氏は「メタバースの最終的な全体像や、何が有効なのかが不確かな状況」と分析。「自社の経営環境がさらに厳しくなることを考慮すると、Hyperconnectのチームは存続させるものの、現時点でメタバースに大きな投資はしないことを決めた」と述べ、メタバース構想は「十分なチャンスがあると判断できたときに事業を進める」との方針を示した。

 また同様に検討・検証中だったアプリ内通貨「Tinderコイン」も、一時撤回し、収益に結び付くように再検討するという。

 日本の大手証券会社関係者は「同グループの売上は第2四半期決算で前年比増となったものの、米経済誌やウォール街の各主要アナリストの予想を下回りました。コロナ禍がマッチングアプリ業界に与えた影響は大きく、回復途上ということでしょう。また全世界のIT事業者がメタバースに興味を示す中、今回のMatch Groupの事業見直し表明はそれなりのトレンドになると思われます」と語った。

(文=Business Journal編集部)