こうして人は騙される…偽情報への警戒心を弱める4つの要素とは

※画像はイメージ(新刊JPより)。
※画像はイメージ(新刊JPより)。

 フェイクニュースに陰謀論、詐欺など、私たちの身の回りには「ウソ」が満ちているし、それは年々巧妙になっていく。

 誰もが「疑わしい情報」を鵜呑みにしないためのセンサーを持っているものだが、どんなに疑り深い人でもまちがった情報を信じてしまうことはある。これは「正しい情報のみを完璧に選別できる人などいない」という以上に、脳の性質が関係しているようだ。

「脳は騙されたがっている」

 脳科学者の中野信子さんが著書『フェイク ~ウソ、ニセに惑わされる人たちへ~』(小学館刊)で指摘しているのは「騙されたがっている」という脳の性質だ。

 よく言われているように、偽情報やウソに騙されないためには「それが事実なのか」「事実と信じてよいのか」「リスクはないか」など、情報を検討し吟味することが唯一の方法になる。情報には常に「疑いの目」を向ける、ということだ。

 ただ、口で言うのは簡単だが、これは結構難しいことかもしれない。というのも、中野さん曰く「脳は怠け者」で「思考のプロセスでもできるだけリソースを使わないようにして、消費するエネルギーを節約しようとしています」。情報を疑うと、そこには思考が生まれる。しかし、脳には思考をしないようにして、脳の活動を効率化する性質があるのだ。

 思考したくなければ、人からの命令に従ったり、「まあ、正しいだろう」と情報を検証せずに信じるに限る。疑うことは騙されないために必須だが、そもそもそれを徹底できる人は少ないのだ。

戦争や災害時にフェイクニュースが広がるワケ

 さらに言えば、脳は「判断保留」を嫌う。これも考えなければならない問題を複数抱えることで、脳に負荷がかかるからだ。「真偽不明な情報は、一度判断を保留し、さらに情報を集める」という、騙されないために不可欠なプロセスは、実は脳には向いていないのだそう。

 また、精神状態も物事の判断に影響する。不安や焦りが制御できていない時、私たちは平常時では考えられない判断をしてしまうことがある。災害時や戦争の時に、明らかに怪しげなニュースが広く拡散されることがあるのは、脳の性質に加えてこうした人間の心理状態もあるようだ。

 「騙されたくない」という気持ちは誰もが持っているにもかかわらず、私たちは簡単に警戒心を捨ててしまう。例えば、弱者に対する同情心や、制服や肩書きなどの「権威」、親族や家族といった「関係性」、リアルな映像・画像の4つは、人間の判断力と警戒心を鈍らせるために利用されやすい。

 疑り深さや警戒心は人それぞれ違うが、「案外自分は物事をフラットに見られていない」という自分への不信感を心のどこかに忍ばせておくのが、騙されにくくなる秘訣なのかもしれない。

 私たちはなぜ騙されて、なぜ間違った情報を真実だと信じてしまうのか。

 本書では脳科学の見地から、人間が本来的に備えている騙されやすさと、猜疑心の限界に迫る。

 今やほとんどの人が日常的にインターネットに触れている。そこではフェイクニュースやあたかも「知る人ぞ知る真実」のような装いの陰謀論、ミスリーディングを誘う広告文句、ウソではないが本当でもないキャッチコピーが溢れている。完全に見極めることはできないにしても、大火傷を負わないように、本書は役立ってくれるはずだ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。