東洋学園大学(東京都文京区)は25日、10日に投開票された第26回参議院選挙に関する学生アンケート結果を公表した。
調査はインターネットと紙ベースの調査票双方の形式で11~18日に実施。同大の学生77人(18~25歳)から回答を得た。調査結果によると、「投票に行きましたか」との設問に対し、「YES」は58.4%で、「全国の投票率52.05%や東京都の同56.55%より高かった」という。
投票先の決め方については、「インターネットで検索(28%)」が最も多く、次いで「選挙公報を読んで(17%)」「ポスターを見て(14%)」「SNSを見て(11%)」「YouTubeを見て(10%)」「TVで見て(10%)」となった。「ボートマッチ(候補者とのマッチングサイト)などを利用(4%)」した学生もいたとしている。
一方で、投票に行かなかった人の理由は、「時間がなかった(50%)」が最も多く、次いで、「面倒だった(18.8%)」「投票したい候補がいない(15.6%)」「興味がない(15.6%)」となったという。
そのうえで、投票に行かなかった学生も「若い世代がもっと投票に行った方が良い(90.6%)」と考えており、次回の投票には「行こうと思う(78.1%)」と回答したという。
なお、投票率を上げるために必要な国などの取り組みとして、「オンライン投票の実現や投票場所の拡充」「選挙割や投票によるインセンティブの実施」「SNSやインフルエンサーを活用したPR」「選挙制度や、各政党と候補者についての分かりやすい説明」「若者の意見を反映した政策の実施」「選挙についての学校教育の充実」などの意見も挙がったという。
学業やアルバイト、サークル活動に忙しい大学生であっても、国政選挙には期日前投票もあり、時間的余裕がそれほどないようには見えない。なぜ、学生たちは「時間がない」のだろうか。
例えば、大学進学のため上京してきた学生は住民票を移していない例も多い。そうした学生は「不在者投票手続き」が必要だ。同手続きでは、選挙人名簿のある市町村選管に“不在者投票用紙”を請求しなければならない。基本的にメールやFAXでのやり取りはできない。しかも、“公示されてから”(それ以前のタイミングでは手続きできないことが多い)郵送もしくは役所の窓口に直接行かなければならず、時間的にタイトになりがちだ。
都内の大学では、中央大学(東京都八王子市)が学生の投票率向上の取り組みの一環として、不在者投票に関するQ&Aサイトを開設し、細かく手続き方法をレクチャーしている。
アンケート調査を行った東洋大広報室の担当者は「ご指摘の不在者投票の手続きの煩雑さのほか、期日前投票だと投票所が遠くなってしまって行けなかったという事例もあったようです。学生たちが投票する上で、何が課題になっているのかを今回のアンケート調査で洗い出し、学校としてどのように効果的な呼びかけをしていくのかを考えていきたい」と語った。
国政選挙における若年層の投票率の低迷は大きな課題だ。総務省によると、選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられた2016年参院選では、10歳代の投票率が45.45%と好調だったものの、20年の衆院選では同41.51%、19年参院選で32.28%と頭打ちで低迷。すべて全体の投票率を大幅に下回ってきた。当初、鳴り物入りで始まった「18歳以上選挙権」だったが実態は微妙な様相だ。
今回の参院選について総務省が12日に発表した18歳と19歳の投票率(選挙区)の速報値は34.49%(投票者全体の投票率は52.05%)。18歳は38.67%、19歳は30.31%という結果だった。前回2019年参院選(32.28%、全体の投票率48.80%)に比べ、2.21ポイント微増という結果にとどまった。
文部科学省の関係者は現状について、「全国の高校の9割で主権者教育が実施されているし、今後も取り組みを続けていく」と語るが、前述の不在者投票を含め、実際問題として個別具体的な投票手続きを知らない学生は多いようだ。学生たちが提案する「オンライン投票」や不在者投票の仕組みなど、各種投票手続きの抜本的な改革が急務だろう。
(文=Business Journal編集部)