ガソリン価格の高騰は米国だけでなく世界共通の現象だ。必需品とはいえ、価格の高止まりが続けば、その購入を控えざるを得なくなる。価格高騰のせいでガソリンなど石油製品の「需要破壊」が世界規模で起きることは間違いないだろう。
世界第2位の原油需要国である中国の6月の原油輸入量は日量872万バレルと4年ぶりの低水準となった。上半期の製油量も前年比6%減の日量1340万バレルと2011年以降で初めて減少している。新型コロナ封じ込めのための「ゼロコロナ」対策のあおりを受けて原油需要が低迷している。中国の不動産市場も相変わらず低迷を続けており、「ハードランデイング」を警戒する声が日増しに高まっており、中国の原油需要は今後大幅に減少する可能性は排除できない。
米国などの急速な金融引き締めがもたらす景気後退による需要の減少観測も広がっており、米シティは「景気後退が起きれば年末までに原油価格は1バレル=65ドルに下落する」と予測している。今年11月の中間選挙の勝利のために原油価格の抑制に躍起になっているバイデン政権だが、景気後退という代償を伴う形での下落になってしまうのではないだろうか。
(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)