オリエンタルフーズでは、東洋大学での学食、五反田でのリアル店舗、フードトラックと店舗運営の形態が広がっていったが、それぞれの運営に関して学生に積極的に参画してもらう仕組みをつくっていった。これは学食で学生に触れる機会が多いなかで米田氏自身がひらめいたという。米田氏はこう語る。
「学生のアイデアは斬新で、それが実際の営業に新しいアイデアとして生かされると働いているわれわれが触発される。そして、アイデアが採用され実績として現れた学生にとって、その教育的効果はとても大きいと考えるようになった」
五反田桜小路でリアル店舗を構えたことがきっかけとなり、五反田駅前の肉フェスである「五反田G1グランプリ」に参加するようになった。同社はここで2014年と19年に優勝しているが、19年に優勝した「伝説の牛カツ赤ワインソース」は学生アルバイトが提案した企画であった。このほか、肉バルでも学生アルバイトのアイデアをメニュー化した事例が数多くある。
このような活動が、20年3月放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)で紹介されたところ、大きな反響があった。それは「新しい学食運営」の依頼である。
「学食」は今や大学をブランディングする役割を担っている。食を扱うビジネスとして、生産者とのつながりがあり、マネジメントがあり、DXがあり、という具合にこれからの社会に必要とされるエッセンスが詰め込まれている。そこで、同社の活動はこれからの大学と学食の在り方を模索する人々から熱く注目された。
その第一弾は、桃山学院教育大学(大阪府堺市)。オリエンタルフーズが同校から求められた「新しい学食運営」のあり方とは、このような内容だ。
(1)スマート食堂(モバイルオーダー、AI、テクノロジーの導入)
(2)ベンチャー食堂(経営体験、メニューコンテスト、空きスペースプロジェクト)
(3)FOODFOODプロジェクト(地域とつながる、地域活性化)
桃山学院大学の学食は天井が高く開放感がある
まず、(1)の「スマート食堂」とは。「並ばない」「触らない」「非接触」のモバイルオーダーをはじめ、これからはAIによってその日の注文予測や1カ月先の売上などがわかることから、食品ロス問題や残飯問題なども解決。売店には無人レジの導入も検討。
(2)の「ベンチャー食堂」とは。食堂や売店の空きスペースをビジネス的に活用する提案であり、食堂のメニューコンテストなども含まれる。洗い場を手伝った対価として食事が無料となる企画等々、食堂がきっかけとなったアイデアを引き出す。
さらに、(3)の「FOODFOODプロジェクト」とは。学食が地域と連携することによって地域活性化と地域社会貢献につながる。地産地消をはじめ、子ども食堂の導入など地域の人々にも活発に学食を利用してもらい、学食を地域社会になくてはならない存在にする。
まさに「学食」は次世代に向けた大きな存在意義を秘めている。プロデュース会社である株式会社アンデレパートナーズと提携し桃山学院教育大学での学食運営は2021年4月から受託。さらに、桃山学院大学(大阪府和泉市)の学食運営を今年4月から受託、神戸国際大学(兵庫県神戸市)の学食運営を今年9月からの受託を予定している。
オリエンタルフーズがコミットする学食プロジェクトは続々と実践されている。先の東洋大学では、5月に同大学のゼミとオリエンタルフーズがコラボ。栃木の生産者とつながったメニューを学生が考案し、同社の店舗で販売。1日50食を即完売した。6月に入り、桃山学院大学の学食プロジェクトメンバー(学生)がキッチンカーのメニューを考案し販売。ルールは「最高に喜ばれるメニューを考案する」「あらゆる手段を尽くして集客する」「いろいろな人を巻き込んでつながりの力を体感する」「他のチームも応援する」――このようにして、9人のプロジェクトメンバーが4チームに分かれて出数を競い合っている。
米田氏はこう語る。
「飲食業とは、製造、マーケティング、提供、そしてお客様の反応に至るまで、一貫して五官で体感できる素晴らしいビジネスです。社会に出ても、ここでの料理が、商品やサービスに変わるだけ。ですから、お客様に喜ばれる商品を徹底的に考える力を養ってほしい」
オリエンタルフーズでは学食運営を進めてきたことで、それを支えてさらに活発にする多めのノウハウを続々と誕生させてきた。そして学食プロジェクトが営まれるようになり、学食は学びの場として育まれるようになっている。
(文=千葉哲幸/フードサービスジャーナリスト)