元AKB48の板野友美(30)が、アニサキス症(食中毒)で激痛に苦しむ姿を自身のYouTubeチャンネルで公開し、話題となった。
板野が、その痛みを「出産より痛い」と表現しているように、アニサキス症の痛みは非常に強い。近年、アニサキス症は増加の傾向にあり、厚生労働省も注意を呼びかけている。
アニサキス症について大宮エヴァグリーンクリニック、池袋消化器内科・泌尿器科クリニック理事長の伊勢呂哲也医師に話を聞いた。
「アニサキスは約15ミリの白い糸状の体を持つ寄生虫の一種で、サバ,サンマ,カツオ,イナダ,イワシ,イカ,アジなどの魚介類を介してヒトに寄生します。胃または腸の壁にアニサキスが食いつきアニサキス症が発症しますが、胃と腸では症状が異なります」(伊勢呂医師)
アニサキス症は、発症の場所によって特徴的な症状がある。
「胃アニサキス症は、アニサキスが胃壁に食いつき発症します。アニサキスが寄生した魚介類を食べてから3~4時間後に発症し、上腹部(ヘソより上)痛・吐き気・嘔吐などの症状を起こします。
一方、腸アニサキス症は、アニサキスが腸に食いつき発症します。魚介類を介し、アニサキスが体内に入ってから十数時間~数日後に、強い下腹部痛・吐き気・嘔吐・発熱などの症状が出ます。腸アニサキスでは、まれに、腸閉塞や腸穿孔などの合併症を起こすこともあります。また、胃アニサキス症、腸アニサキス症と比べると、症例数は少ないケースではありますが、アニサキスが消化管を突き破り寄生する、消化管外アニサキス症があります」(同)
一般的にアニサキス症の痛みは、アニサキスに噛まれることによって引き起こされると誤解されているが、実は、その原因は「アレルギー」だという。
「アニサキスが胃や腸の壁に食いつくことから“噛まれる”という物理的痛みだと思われがちですが、実はアニサキスが食いついた場所でアレルギー反応が起き、周囲の粘膜が腫れて炎症が起きるために痛みが生じます。アニサキスアレルギーは痛みだけでなく、蕁麻疹やアナフィラキシーショックを起こす可能性もあります。
胃アニサキス症の治療は、内視鏡下で鉗子という器具を使用し、アニサキスが切れないように慎重に摘出します。摘出が難しい場合や腸アニサキス症では、症状を抑える薬を服用し、アニサキスが死滅するのを待ちます。通常、人の体に入ったアニサキスは、1週間ほどで死滅します」(同)
しかし、消化管外アニサキス症では、発症する部位によって症状も異なるため、症状に応じた治療が必要となる。
「消化器外アニサキス症では、痛みもかなり強く、腹腔内に肉芽腫を形成することもあり、場合によっては外科的手術が必要となります」(同)
魚介類を食べた後に、これまで経験したことのないような胃痛や腹痛があった場合には、アニサキス症を疑い、早めに医療機関を受診してほしい。
アニサキスは、新鮮な魚介類の内臓表面に寄生し、鮮度が落ちてくると筋肉に移動する。魚介類を調理する際は、新鮮なうちに内臓を取り除くことが重要だ。伊勢呂医師は、魚介類の調理の際に予防策を行ってほしいと話す。
「アニサキスの有効な予防策は、加熱、冷凍、目視です。
(1)加熱…アニサキスは60度で1分,70度以上の加熱で瞬時に死滅します。
(2)冷凍…-20度で24時間以上、冷凍すると死滅します。
(3)目視…アニサキスは、約1.5cmで半透明白色なので、肉眼で見ることができます。十分に目視し、調理前に取り除いてください」(同)
夏の暑さの下では、魚介類の鮮度が落ちるのも早いと思われる。調理の際には、目視を十分に行い、加熱または冷凍を行うなどアニサキス症の予防に努めてほしい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)