財務省は東京地下鉄(東京メトロ)の株式売却の主幹事証券に野村證券、みずほ証券など5社を選定した。金融商品取引法違反の疑いで起訴されたSMBC日興証券は外された。国内の区分では、野村證券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券が選ばれ、海外区分はゴールドマン・サックス証券、BofA証券とすることを決めた。
統括役となるグローバルコーディネーターは野村、みずほ、ゴールドマンの3社が務める。財務省と東京都は、主幹事業務に応募した9社から5社に絞り込んだ。SMBC日興のほか、大和証券、JPモルガン証券、UBS証券が外れた。
財政制度等審議会(財務省の諮問機関)は今春、政府と東京都が保有する東京メトロの株式について50%を売却することが「適当」との答申をまとめた。政府は2020年度末時点で東京メトロ株式を53.4%保有する筆頭株主。東京都も46.6%を持っている。売り出しが終わると、政府と都の保有率が合わせて50%まで下げる。
メトロの純資産6400億円程度を企業価値とした場合、売却額は3000億円超になると財務省は試算している。政府分の売却額は1700億円程度。売却益がどのくらいになるか明らかにされていないが、東日本大震災の復興財源に充てる。売却期間は27年度と定められている。売却時期や手法を今後、詰める。
東京メトロの22年3月期の連結決算は、売上高が前期比4%増の3069億円、最終損益は133億円の赤字(21年3月期は529億円の赤字)。04年の民営化以降で初めて最終赤字を計上した前期に比べ、赤字幅は縮小したものの2期連続の赤字となった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワークの定着で定期兼を利用する乗客の回復が鈍かった。
SMBC日興証券の幹部らによる相場操縦事件で、証券取引等監視委員会は特定の銘柄の株価を維持するために不正に買い注文を出したとし、幹部7人と、法人としての同社を金融商品取引法違反(相場操縦)の疑いで東京地検に告発。東京地検特捜部は3月24日、同社と幹部らを同法違反罪で起訴した。
社債発行市場で社債発行を準備していた企業がSMBC日興外しに動いた。北海道電力は10年物のグリーンボンド(環境債、発行額50億円)の共同主幹事にSMBC日興の起用を見送り、代わりに大和証券を入れた。りんかい線を運営する東京臨海高速鉄道も10年債(発行額80億円)の主幹事からSMBC日興を外した。イオンモールも2本の社債(総額350億円)の主幹事からSMBC日興を外した。東京メトロの株式売却の主幹事からSMBC日興が外れたことが、株式市場での“SMBC日興外し”の先駆けとなった。
(文=Business Journal編集部)