50歳を過ぎて、60歳も近くなってくると住宅の購入、買い換えは難しいと考える人がほとんどではないでしょうか。しかし、実際にはそんなことはありません。50歳代の人でも買ったり、建てたりしている人は少なくありません。なかには60歳代で買い換えている人もいます。60歳になったからといって諦める必要はないのです。
??年齢が高くなってくると、マイホームの夢を諦めたり、買い換えをためらう人が少なくありません。いつまで働き続けることができるのか、住宅ローンを借りられるのかといった不安から、マイホーム取得に踏み切る人が減少するのが現実のようです。50歳代になると管理職定年制などで年収が下がったりしますし、定年後も再雇用で働けるといっても、収入は半減以下になるのがふつうです。しかも、住宅ローンには年齢制限があって、高齢になるほど借りにくくなるという問題もあります。
多くの金融機関では、「完済時満80歳未満」という条件を設けています。44歳以下であれば、最長の35年返済を利用できますが、50歳だと29年、55歳だと24年、60歳だと19年までに限定されます。利用できる返済期間が短くなれば、それだけ毎月返済額が増えます。その一方で年収が減少すれば、返済が苦しくなるのは間違いありません。
??そのため、購入をためらったり、諦める人が多いのですが、実際には比較的年齢が高くなっても、購入したり、買い換えたりする人が少なくないのです。
図表1は、国土交通省の『令和3年度住宅市場動向調査』から、住宅の形態別に初めての購入である一次取得者と、買い換えなどの二次取得者の平均年齢をまとめたものです。たしかに、一次取得者は最も若い分譲戸建住宅が37.2歳で、分譲マンションは39.5歳ですが、注文住宅、中古住宅などは40歳代です。この平均年齢なら最長35年の住宅ローンを利用できますから、ゆとりを持って資金調達できそうです。
それに対して、二次取得者をみると、注文住宅は59.0歳と60歳に近く、分譲マンション、中古戸建住宅は56歳代、中古マンションは57歳代になっています。平均でこれですから、なかには60歳になってから買い換えている人もかなりいるのではないかと推測されます。
??とはいえ、年齢が高くなれば先に触れたように住宅ローンを組みにくくなるのもまた事実ですから、その分、自己資金を多くする必要があります。そこで、実際の自己資金と借入金の資金構成をみると図表2のようになっています。取得者の年齢が最も高い注文住宅では3221万円の借入額に対して自己資金が3157万円ですから、自己資金割合は49.5%です。分譲マンションや中古戸建住宅、中古マンションでは自己資金割合が60%を超えています。
最近は中古住宅の価格が大幅に上昇しているため、手持ち物件が購入時の価格以上で売れるケースが増えています。不動産仲介の大手や中堅が加入している不動産流通経営協会の調査によると、2021年度に買い換えを行った人のうち、売却差額がプラスになっている人が37.5%だったそうです。2015年度にはその割合は20.5%でしたから、プラスになる人がジワジワと増えています。
購入価格より高い価格で売却できれば、住宅ローンの残高があったとしても、残高を一括返済しても手元にかなりの資金が残るはずです。それを自己資金に回すことができるので、資金繰りもかなり楽になります。最初の購入から一定の年月が経過していれば、その間に蓄えもできているでしょから、それを加えれば購入価格の半分からそれ以上の自己資金を用意できるという人が多くなっているのです。