楽天G、楽天モバイルの巨額赤字を高収益の金融子会社の上場で穴埋めか

 楽天グループの携帯電話事業は巨額の赤字を計上している。携帯基地局の建設費用がかさみ、これまでの設備投資は当初計画の6000億円を上回り、1兆円規模にまで拡大している。コロナ禍の巣篭もり需要で楽天市場などのEC事業は好調で推移したが、そこで上がった利益をすべて飲み込むほど足を引っ張っており、楽天グループの22年1~3月期連結決算では、携帯電話事業部門の1350億円の大幅な営業赤字が重石となり、全体では1126億円の営業赤字を計上した。

 銀行と証券の純利益は合計で年300億円規模と、グループのなかでも高収益企業だ。今回の上場について市場関係者は「現在入ってくる安定した収益を犠牲にしても上場益で手元資金を確保しなければいけないほど、携帯電話事業による赤字拡大は楽天グループの懸念材料となっている」と分析する。

 また、子会社の上場は親子上場と呼ばれ、日本特有といっていい企業社会の慣行だ。子会社の株主が親会社の決定を覆すことが難しいなどの弊害から、日本政府もコーポレートガバナンス強化の観点から近年問題視しており、解消を呼びかけている。楽天の今回の上場準備はこれに逆行するものであり、この観点でも議論を呼びそうだ。

 楽天グループは携帯事業を本格的に開始してから2年が経ち、人口カバー率97%を達成、契約者数が500万人を超えるなど自信を深めている。ひとまず、三木谷氏が公言したように楽天モバイルが23年中に単月黒字化を達成できるかどうかが、焦点となるだろう。

(文=竹谷栄哉/フリージャーナリスト)