「ジェネリック医薬品は規模で戦う時代に入った」。日医工の田村社長は、エルメッドエーザイの買収を発表する記者会見でこう強調した。薬価引き下げ圧力が強まり、競争環境が厳しさを増すなか、規模を拡大。「将来は世界トップ10入りを目指す」と胸を張った。21年2月、武田薬品工業が49%出資する武田テバファーマから後発薬事業を買収し、高山工場を譲り受けた。M&A攻勢で売上高は急増。田村氏が社長になった当時の売上高は100億円だったが、20年3月期には1900億円と19倍になった。「次の20年間で年商5000億円にする」と豪語していた。
20年3月期に3年ぶりに首位が交代した。日医工の連結売上収益(国際会計基準)は前期比14%増の1900億円となり沢井製薬の売上収益(同)1825億円を抜いて首位に躍り出た。トップ躍進の原動力となったのが19年4月に連結子会社に組み入れたエルメッドエーザイだ。統合したことで国内後発薬売上高は前期比2割伸びた。しかし、利益では大手3社のなかで一人負けの状態だった。コア営業利益(営業利益から一時的な要因を除いたビジネスベースの利益を指す)は40%減の80億円。米子会社セージェントの収益が見込み通り上がらなかったことに伴う減損損失や、国内で行った大規模な自主回収の費用を引当金として計上したことが響いた。
アナリストは21年3月期は再び首位が逆転すると予想した。日医工の売上収益は横ばいの1900億円、 コア営業利益は前期比63%減の30億円の見込み。対する沢井製薬の売上収益は10%増の2002億円、コア営業利益は1%増の348億円を予定していた。沢井は米国で前期に獲得したジェネリックブランド品の販売が寄与するという読みだった。
確定数字は次の通りだった。日医工の売り上げが1882億円、最終損益は41億7900万円の赤字)。一方、サワイグループホールディングスは売上高1872億円、最終利益は123億円だったから売り上げトップは日医工のままだった。東和薬品の21年3月期の売上高(日本会計基準)は1549億円、営業利益は199億円だった。最終利益は139億円だった。
日医工はM&Aで自社にない医薬品を手に入れた結果、製品のラインアップは約1220品目にまで膨らんだが、これが足かせとなった。700品目後半の沢井製薬や東和薬品を6割程度上回る。他社が撤退した低採算の医薬品を多く製造していることから、規模の大きさが利益に結びつかないと指摘されていた。M&Aでひたすら規模を追い求めてきた拡大路線が、大規模な自主回収を繰り返し、業務停止命令を受ける原因となった。
日医工が業務停止処分を受けたことで沢井製薬(21年4月から持ち株会社のサワイグループホールディングス)の一人勝ちになる公算が大きいとアナリストは見ていた。日医工は業務停止命令を受け、業績は一段と悪化した。後発薬そのものの信用にかかわる問題を起こした田村社長の引責辞任は避けられないだろうとされていたが、結局、ワンマンの田村社長はその椅子を手放さなかった。日医工は経営責任を明確にせず、中途半端なまま営業を続け、結局、経営破綻に追い込まれた。日医工の破綻でジェネリック医薬品業界の再編は待ったなしとなった。
(文=Business Journal編集部)