市場価格が高騰している未開封ソフトだが、生産数が少なく知る人ぞ知るようなタイトルであれば、その価値はより跳ね上がりそうだ。一方で、100万ドルを超えるような高値を記録するのは、何百万本も売れた大ヒット作品の未開封美品だという。
「『スーパーマリオブラザーズ』などの人気ゲームは、誰もが購入してすぐにプレイしたので、未開封のまま残っているものが少ない。でも、知名度は抜群だし、ゲーム史的な意味で文化的な価値も高いということで、超高値がつきやすいんです。これは、おもちゃやカード、コミックブックといったサブカルチャー的なアイテム市場では共通の価値観ですね」(同)
ただし、ここ数年のレトロゲームの異常な高騰は、必ずしもコレクターの過熱だけが要因ではないかもしれない。実は、近年のレトロゲーム人気に乗じて、オークション会社側が意図的に価格を釣り上げている可能性が指摘されているのだ。前述した未開封の「スーパーマリオ64」に高値がついたケースでも、保存状態を見極める鑑定会社とオークション会社の経営者が共同購入して最高額を更新し、レトロゲーム市場全体の高騰を促したのではないか、という疑惑が浮上している。
「海外でレトロゲームの超プレミア化が進んだのは、ここ数年のことです。20年ほど前までのアメリカでは、ガレージセールに行くとカゴいっぱいにNESのカセットが積まれていて二束三文で売られているなど、かなり雑な扱いでした。中古ショップもありましたが、未開封品だからといって、特に価格を釣り上げるようなことはなかったですね」(同)
現在、レトロゲームの高騰が見られるのは海外市場がメインだが、今後は日本でも同様の傾向が強まっていくのだろうか。
「もちろん、日本でも新品や未開封品は高騰するとは思います。ただ、日本のゲームソフトは海外と違ってビニールでシュリンクパックされておらず、紙箱のまま販売されていた商品も多いため、開封済みかどうかを判断するのは難しいんです。『プレイステーション』以降のCD-ROMのケースなら、完全に未開封品かどうかがわかりますが……。また、日本のレトロゲームは海外のマニアにも人気が高いので、すでに多くの美品が買われてしまっています。そのため、日本の市場で流通するプレミアソフトの数はさらに限られていくでしょう」(同)
ちなみに、CD-ROMなどのディスクメディアは経年劣化が激しく、20年ほどで盤面が酸化して読み込めなくなってしまうことが多いので、いくら美品でもソフトとしての価値がない場合もあるという。
自宅に美品の人気ソフトが眠っていれば、一攫千金も狙えるレトロゲームの世界。しかし、「ゲームソフトは20本組みの段ボール箱で小売店に搬入されていたりするので、いきなり新品未開封品が大量に発掘されて値崩れするようなこともあり得ます」(同)と、まだまだ安定した市場とはいえない様子。今から投機目的でレトロゲームをコレクションするのは、やめておいた方が良さそうだ。
(文=清談社)
●清談社
せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。http://seidansha.com