流行する「アンバサダーマーケティング」に抱く違和感の正体

真のアンバサダーとは「オタク」?

 アンバサダーマーケティングに抱く違和感の正体がわかったら、次は「マーケティングとエンゲージメントは同時進行できない」ということも理解しましょう。

 物事には順番があるように、先にマーケティングを行って認知度を得た後に、エンゲージメントを高める段階に移るなど、両者の効果を理解した上で、順に戦略を立てる必要があります。しかし、今流行しているアンバサダーマーケティングは、媒体への理解が足りず、戦略と媒体がマッチしていないケースが多く、そもそも成立していないのです。

 そうなると、「エンゲージメントを高めるためにアンバサダーを使うには、どうしたらいいのか?」という疑問が浮かぶと思います。その答えは、アンバサダーの人物像から導き出せます。

 まず、アンバサダーの肝となるのは、その商品やサービスへの愛情度です。具体的には、その人の生活の中でどのように使われていて、どのくらいディープな情報を持っているのか、などです。

 ディズニーファンを例にしてみましょう。年間パスポートを購入して、毎週末のようにディズニーリゾートに通っていると聞けば、書店で売っているガイドよりも、ディープでお得な情報を知っているのではないか、と思いませんか?

 そう、アンバサダーとは言い方を変えると「オタク」なのです。その商品やサービスのディープな情報は、インフルエンサーには必要ありませんが、アンバサダーには必要です。情報があふれている今、私たちは何かを調べるときに、よりディープでためになる情報を求めます。その情報元が、「オタク」であるアンバサダーなのです。

 そして、アンバサダーの活動や情報が、ディープでオリジナリティにあふれていたら問題はないのですが、すでに知っていたり、公式サイトなどで公表されているものだったら、ガッカリしませんか?

 これがアンバサダーの深いところであり、恐ろしいところでもあります。ディープな情報を発信しないアンバサダーは、やがて見向きされなくなるでしょう。さらに、そんな人物をアンバサダーに起用している企業への信頼感は薄れていき、イメージダウンにつながる危険性もあります。

 一般人を使ったアンバサダーマーケティングは決して悪いものではなく、情報社会の現代では有効な手段です。しかし、やり方を少しでも間違えると、効果を期待するどころか、マイナスになってしまうこともあります。

 商品やサービスの知名度を上げたいなら、インフルエンサーを使う。エンゲージメントを高めたいなら、アンバサダーを使う。このルールだけは間違えないように気をつけてください。

 次回は、実際にブランディングにアンバサダーを取り入れるための具体的な方法についてお伝えします。

(松下一功/共感ブランディングの提唱者、安倍川モチ子/フリーライター)