「ロシアは世界で孤立」の嘘…国連決議に反対等の国の人口、世界の過半数か、西側へ不信

 国際通貨基金(IMF)は19日、「ロシアのウクライナ侵攻は成長鈍化とインフレ進行というかたちで世界経済全体に影響を与える」とした上で「長期的には世界経済の秩序を根本的に変える可能性がある」との見解を出した。資産運用で世界最大手の米ブラックロックも24日、「ロシアのウクライナ侵攻で我々が知りうるグローバル化は終わりを迎えた」との見方を示した。

 冷戦終結後、大量の安い労働力を有する中国と大量の天然資源を持つロシアが世界経済に入ってきたことで世界経済のグローバル化は急速に進んだが、今後はサプライチェーンが分断化される世界を前提とした再調整が不可避の情勢だ。

 足元の動きで注目すべきはBRICS(2000年代以降に著しく経済発展を遂げた5カ国)を構成する中国、インド、ブラジル、南アフリカが揃って前述の国連決議を棄権し、ロシアに対する制裁を科していないことだ。BRICSのGDPの合計は世界の3分の1を占め、米国とEUを合計したGDPに匹敵する規模にまで拡大している。

 ロシアのプーチン大統領は23日、「非友好国」に対し、天然ガスの支払いをルーブルで行うよう要求した。西側諸国は「契約違反だ」として拒否しているが、この動きはコモデイテイーに裏打ちされた通貨の発行に向けての最初の一歩になるのではないかと筆者は考えている。天然資源や穀物が豊富なBRICS内で、いわゆるコモデテイテイー通貨が広く流通するようになれば、現在の主要通貨である米ドルとともに、世界の金融システムを支えるもう一つの柱になるかもしれない。

 ロシアがウクライナに侵攻して1カ月が経ち、西側諸国では「ロシアは国際的に完全に孤立している」との見方が常識だが、必ずしも国際社会全体の実態を表していない。世界経済がどのように変容していくかを丹念に観察することが重要なのではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

●藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー 

1984年 通商産業省入省
1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)
1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)
1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)
2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)
2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)
2016年 経済産業研究所上席研究員

2021年 現職