日本初の「現役漫画家」国会議員に?赤松健氏、異例の事務所開きに密着取材

"事務所に設置された愛用の液晶ペンタブレットを使う赤松健氏(撮影=編集部)
事務所に設置された愛用の液晶ペンタブレットを使う赤松健氏(撮影=編集部)

 人気漫画「ラブひな」「魔法先生ネギま!」「UQ HOLDER!」(いずれも講談社)の作者、漫画家の赤松健氏(日本漫画家協会常務理事)は22日、東京・JR秋葉原駅近くに「赤松健事務所」を開設した。同事務所では同日から、期間未定で同氏の政策や過去作品の原画など展示するプロフィール展も始まった。

 赤松氏は昨年12月、自身の公式Twitterアカウントで、ネット漫画の海賊版対策や「表現の自由」に関する政策を掲げ、夏の参議院議員選挙に向け自民党から立候補する意向を発表していた。仮に立候補し、当選すれば憲政史上初の「現役の日本漫画家・国会議員」となることから、注目を集めている。22日、同事務所を取材してみた。

政治事務所に作品の原画を展示する意図は

 事務所は秋葉原を象徴するメーンスポットのひとつ、ベルサール秋葉原前の交差点を万世橋方向に進んだ、中央通り沿いに位置している。1階には、政策を紹介するパネルの他、赤松氏が実際に漫画制作に使用する液晶ペンタブレットや数点の原画が並ぶ。タブレットを使って実際の生原稿に手を加えることもできる仕様という。

 2階には「ラブひな」「魔法先生ネギま!」の“名シーン”を描いた生原稿十数点が展示されており、自由に見ることができる。原画は撮影可能。また赤松氏が同事務所に駐在している際は、来所した人たちと交流を深めていく方針だ。

事務所2階には赤松氏が手がけた作品の原画が並ぶ
事務所2階には赤松氏が手がけた作品の原画が並ぶ

 なぜ原画を展示するのか。そこには赤松氏がこれまで取り組んできた「知的財産のアーカイビング」の重要性を伝える意図がある。

 漫画の生原稿など創作物の現物は、処分されてしまったり、海外のコレクターの手に渡るなど、散逸しやすい傾向にある。一方で、創作物の実物を実際に見て学ぶことは、後進のクリエイターの育成にとっては欠かせない。展示を通じて、それらの重要性を伝えたいと赤松氏は考えている。

異色の“事務所開き”に込められた考えとは

 比例・選挙区を問わず、一般的な国政選挙の立候補予定者の“事務所開き”では、自治体の首長や地方議員、日本医師会など特定政党の支持団体の幹部や有力者が一堂に会し、物々しい雰囲気の中で演説や神事などが行われるのが常だ。また、普段から事務所を訪れるのは地域の顔役などが目立ち、一般の有権者は近寄りがたい雰囲気が醸し出されている。赤松氏の事務所は趣が異なるようだ。

 赤松氏は「私には特定の支持団体が一切ないので、こういう形にしました。漫画やアニメ、ゲームなどのファンの方、漫画に関心がない方でも、興味を持った人すべてに自由に立ち寄ってほしいと思っています」と語った。

 漫画家の国政参加に関しては、かつて漫画家の本宮ひろ志氏(『サラリーマン金太郎』『俺の空』作者)が参議院選挙に立候補しようとしたことがあった。本宮氏の実録的な漫画作品の中には、石ノ森章太郎氏(『仮面ライダー』『サイボーグ009』作者)らから、特定の政治家に取り込まれたり、利用されたりしてしまう危険性を諭されるシーンがある。

 本宮氏の逸話を挙げた上で、赤松氏は「第一線で活躍する若い世代の漫画家・クリエイターたちに創作活動に集中してもらうため、私は漫画家協会の常務理事として、これまでもインターネット上の漫画の海賊版対策やコミックマーケットなどの二次創作活動の保護、表現の自由を守るための国会でのロビー活動をやってきました。他の漫画家の方々からも、特に反対の声は来ていません。『これまで通り頑張ってほしい』という応援が多いです。特定の勢力に取り込まれるということなく、自由にしがらみなく、守るべきものを守り、言うべきことを言っていきたいです」と話した。

(文=Business Journal編集部)