このままいけば、いよいよ“岸田不況”が起きるのでは――。投資家や経済界からは、そんな笑えない話が囁かれ始めた。
岸田文雄首相といえば、就任してから金融所得課税の強化や企業の自社株買いへの規制などを検討していることが次々と報じられて、4カ月間で東証1部上場企業の時価総額100兆円を吹っ飛ばした、いわゆる“岸田ショック”を引き起こしたことなどから、“絶望的な経済オンチ”ではないかと疑われている。就任時にノートを高々と掲げて、壊れたレコードのように繰り返した「新しい資本主義」の具体的な中身の説明を求められても、いまだに抽象的な言葉の羅列をしていることも疑惑に拍車をかけている。
そんな「岸田首相、実は経済についてド素人説」が、経済界や市場関係者の間で最近、「確信」に変わったのが、2月25日に政権肝煎りの「経済安全保障」を閣議決定したことである。某上場企業の幹部が頭を抱える。
「いろいろな綺麗事を並べているが、これは中国とのビジネスだけではなく、中国本土に進出している日本企業への規制強化以外の何物でもない。今、コロナ禍で弱っている日本経済をなんとか支えているのは、最大の貿易国である中国とのビジネス。そこを規制して鎖国のようなことをすれば、どんな悪影響があるのかをまったくわかっていない」
日本の貿易に占める対中比率は過去最高。コロナ禍で壊滅的なダメージを受けている観光業も、中国人観光客によって支えられていたという事実がある。経済安保の重要性はわかるが、コロナ禍で疲弊する経済を立て直している今わざわざやらなくてはいけないことなのか、という疑問の声は、株式市場からも聞こえる。
「実はこの経済安保を推進する代わりに、今国会でマネーロンダリング対策法案(AML法案)が見送られています。マネロン対策は世界各国が法整備を急ピッチに進めているので、これで日本の金融市場はまた大きく取り残されます。経済安保も重要な視点ではありますが、現実としては中国に輸出も輸入も依存している日本企業の勢いをそぐことになる。コロナ禍から徐々に立ち直ってきている世界のなかで、日本の経済成長は相変わらず弱いという問題があるなかで、どちらを優先すべきかは明らかですが、岸田政権にはそういうセンスが皆無」(投資会社アナリスト)
つまり、「対中国」の規制強化ということで、保守派は拍手喝采のこの政策は、実のところはコロナで弱った日本経済の足を引っ張って、多くの国民を苦しめることにしかならないのだ。
では、なぜ多くの人が「愚策」と指摘する経済安保に、岸田首相はそこまで傾倒してしまったのか。永田町で囁かれているのは、「経済オンチ」につけ込まれて、「経済安保利権」を貪る海千山千の人々に言葉巧みに操られてしまっているのではないかという疑惑だ。その筆頭格として名が挙がるのが、「経済安保のドン」として知られる甘利明衆議院議員だ。
甘利氏は岸田首相誕生の最大の功労者であり、その恩に報いるために岸田首相は、甘利氏が掲げていた経済安保を重要政策に取り入れて、1日も早い法制化を目指しているといわれている。そこで気になるのは、なぜ甘利氏がそんなに「経済安保」にご執心なのかということだろうが、そこでは耳を疑うような噂も聞こえてくる。
「国家天下の話じゃない。同じ神奈川選出のライバル・菅義偉前首相に抗するためだけですよ。菅さんは官房長官、首相を経て、携帯電話利権や観光利権、さらには横浜カジノなど数多の利権を手中におさめて、小泉進次郎や河野太郎など党内勢力もそれなりにある。しかし、神奈川の山側が選挙区の甘利氏には利権になるものがない。そこで、川崎市選出の山際大志郎経済再生相、中山展宏衆議院議員などを配下にして、経済安保の重要性を唱えて利権化を目指しているというのが、神奈川ではまことしやかに囁かれている」(神奈川県内の自民党市議)