坂本氏は京セラ創始者の稲盛和夫氏の影響を強く受けている。稲盛氏の経営塾「盛和塾」出身のベンチャー経営者の成功例だった。師と仰ぐ稲盛氏は、常に相手の利益を考える「利他の精神」を教えていた。リベート問題は、その精神を踏みにじる行為だと見なされた。
18年3月19日付「ダイヤモンドオンライン」記事によれば、坂本氏は東京駅の京セラに近い稲盛氏の事務所に呼び出されたという。
<稲盛塾長の第一声は、「あんたは盛和塾でなにを勉強してきたのか!」だった。稲盛塾長は、「君は復讐しようとしているな」とも言った。図星である。実は私はそう思っていた>(「ダイヤモンドオンライン」記事より)
<稲盛塾長は、「挑戦しろ」と言ってくれた。「俺が付いているから大丈夫だ。なんでも相談に来い。いつでも電話かけてこい」>(同)
坂本氏は再起を図る。立ち飲みで回転率を高め、高級な料理を安い値段で提供する事業に商機を見出した。2012年、「俺のフレンチ・俺のイタリアン(現・俺の株式会社)」を設立し、一大ブームを巻き起こした。ブックオフの持ち株を売却して新事業の軍資金とした。
2月9日付東京新聞(夕刊)は坂本氏の死に触れ、次のように綴っている。
<ブックオフのあと、ヤフオク!やメルカリが登場した。安く買って、読み終えたらすぐ売る。書物は所有するものではなく、読書という経験を楽しむものになった>
<坂本のもたらした書物観や読書観の変化は、いいものなのか悪いものなのか。我々は何を失い、何を得たのか。それを判断するのはまだ早い>
ベンチャー経営者の死が文化論に関連して論じられるのは珍しいことだ。
(文=Business Journal編集部)