「確かに私も自発的に管理職になったわけではありませんでした。なんというか、自発的に手を上げて“やりたい”とアピールすると“ああ、そういう人なんだ”みたいな社内の空気があったので、そこは上司の推挙を待ってという手順を踏んだというか……。
実際に管理職になってみて、会社の制度的にはなんの問題もないはずなのに、子どもの都合で休みも取りづらくなったというのはありますね。制度は整っても社内の空気が追い付いていないというのはあると思います」
一方、大手メディアの女性幹部は次のようにぼやく。
「長らく“男職場”と言われてきたメディアもここ最近、ようやく女性幹部が定着してきました。ただ男女比を均等にするだけではなかなか難しい面もあると思います。
毎日、生ニュースを扱うメディア業界では、プレイヤーとしてのパフォーマンスが管理職にも求められることが多々あります。本来、編集幹部はマネジャー・プロデューサーとして企画を立案したり、チームメンバーを適正に差配したりすることがコア業務です。しかし実際には、プレイヤーとしても優秀ではないと認められない風土がある。
だから、幹部級の人間が社会・経済の大事件や大災害の取材の現場などに立たなくてはいけないという場面が生じます。そういう時に『子どもが熱を出していて』とか『父親の介護があるから』などと容易に休めませんよね。
とにかく“管理職のジョブとはなにか”が曖昧なので、管理職は『マネジメントもプレイヤーも両方できる人であれ』みたいな風潮が強く残っている気がします。
当然、現場を管理職が知っていることはとても大切なことですが、プレイヤーとして優秀かどうかということと、管理職に必要なスキルはまた別だとも思います。裁量の大きい仕事をしてみたいと思っている女性はたくさんいると思います。
しかし管理職が『なんでもできる人』『残業代を払わずにどんな時でも使い倒していい人』になっている限り、女性に限らず、男性もしんどいと思うのは当然でしょう。昇進したいと思う人が、そう思う人より少ないという調査結果には、うなずけるところがあります」
(文=Business Journal編集部)