岸田政権「鎖国」、海外企業・投資家の日本離れ加速…基準なき異常な入国規制の代償

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岸田文雄首相のInstagramより

 岸田文雄首相は17日、新型コロナウイルスの水際対策を3月から緩和する方針を示した。政権発足直後の昨年11月末に外国人の新規入国を原則禁止するなど国際的に異様に厳しい対策を打ち出してきたが、外国人ビジネスパーソンや留学生の行き来ができなくなるなどの弊害が指摘されたことを受けて緩和に踏み切った格好だ。今回の一連の政府の対応は日本特有の「鎖国リスク」を国際的に印象付けた。

3カ月続いた鎖国状態、国内外の猛批判を受け対策を緩和

 岸田政権は昨年11月末にオミクロン株の海外での感染拡大を受け、外国人の新規入国を原則禁止にした。その後、12月1日には外国人の入国者総数の上限を1日5000人から3500人に引き下げる厳格な対応をとった。その後は入国者の待機期間を14日間から段階的に7日間に短縮していた。3月からは1日あたりの入国者上限を現在の3500人から5000人に引き上げ、入国が認められた外国人の自主待機期間を条件付きで3日間に短縮もしくは待機免除にする。入国はビジネス関係者や留学生など観光客以外を優先し、段階的に緩和していく方針だ。

 緩和の背景には水際対策が国内外から猛批判を受けたことがある。一律の入国規制で留学生の就学は滞る上、外国人エンジニアなど企業運営に欠かせない人材が満足に働けなくなってしまったからだ。この点について、日本の与野党や経団連などはもとより、日本最大の外国経済団体、在日アメリカ商工会議所(ACCJ)の特別顧問が英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」で「外国企業の事業や外国からの投資に対して信頼のおける受け入れ国であろうと日本がしているのか疑問が湧く」と批判した。

具体的な基準もない一律の入国規制はパニックにしか映らない

 新型コロナウイルスが未知の疫病であることは間違いなく、岸田政権の自国民の安全を最優先に守ろうとする姿勢自体は理解できる。今回の対応で問題になったのは、具体的な基準もなくパニックになったように国境を閉ざしたことだろう。たとえビザを持っていようがお構いなしに入国拒否をされれば、誰でも不満を持つ。まして、日本人の留学生やビジネスパーソンが海外で活動している現状を見れば、批判のトーンは高まらざるを得ない。対策の中身にしても、「外国人の入国者はホテル隔離を必ず課して、その費用は国が実費負担する」など抑止力のある対策をとっている国もあり、工夫をする余地は確実にあった。

 昨年11月の段階で日本のワクチン接種率は世界最高水準であった。それに加え、世界保健機構(WHO)も今年1月にオミクロン株が世界で流行してしまった現実を踏まえ「国際的な渡航禁止措置に付加的な効果はなく、加盟国の経済的・社会的ストレスの原因となり続けている」と解除または緩和を勧告したことを考えれば、日本政府は厳しい水際対策について少なくとも諸外国に対して説得力のある説明はできない。

 今回の対応を見て、判断力のある海外の企業トップや投資家ならリスクのある投資国と認定するのは避けられず、長期的な日本の信頼を著しく損ねたことは間違いない。

岸田政権の高い支持率はリスクゼロ信仰の日本人にウケたが陰りも

 岸田政権の水際対策強化はゼロリスク信仰の強い日本人には歓迎された。支持率は各メディアの世論調査でも50%越えを維持し、コロナ対策については一部世論調査で約90%が賛成するという結果も出ている。これが岸田政権が入国規制を今年2月末まで3回にわたり延長してきた根拠だが、それに陰りも出てきている。

 オミクロン株がすでに流行してしまった今、入国規制を続ける意味合いが薄れたという意識が日本国内に浸透したことに加え、第3回目のワクチン接種が進んでいないためだ。焦った岸田首相は菅義偉政権にならい、「1日100万回接種」を突然唱え、自衛隊の大規模接種センターを1月末再開したが、予約状況には空きが目立つ。