2018年の総務省の住宅・土地統計調査によると、全国の空き家数は848万9000戸で過去最高となった。単純に景観を損ねるという観点からも敬遠される空き家は倒壊や犯罪の温床となる危険もあり、国や自治体は減らしたいと考えている。
空き家の所有者は「壊すのにお金がかかるから」「二束三文で売るくらいならこのままでいい」と放っておく場合が多いが、それでは宝の持ち腐れになってしまうかもしれない。やり方によっては、空き家は有益な資産となるのだ。
そこで、空き家ビジネスの事情について、不動産コンサルタントで株式会社籠や代表取締役の小林寛史氏に話を聞いた。
「空き家ビジネスは一般的になりつつあります。どうやって始めればいいかわからないという方がほとんどだと思いますが、実はわりと簡単です。たとえば、電気もガスも通っていない田舎の一軒家を相続したとして、空き家にして放っておくのはもったいない。おすすめは『蜂の巣ハウス』ですね。
一棟貸ししようとしてもなかなか借りてくれる人はいませんが、一軒家の中を蜂の巣のように小さく区切ってしまうんです。通常なら家賃12万円だとしても、全部で12部屋に区切って一部屋3万円の家賃とすれば、利益率は各段に上がります。狭くても不便でも安い。そういう物件は、海外から出稼ぎにくる方や留学生の方に需要があるんです」(小林氏)
電気やガスを通すなどの改装は、可能な限り「自分でやる」と小林氏は言う。
「もちろん、私自身もやります。100万円で買って、直すのに200万円かけては意味がないですから。できることは自分でやる、DIY(Do It Yourself)です」(同)
特にビフォーアフターが印象的なケースがあるという。
「伊豆に1億円以上する高級別荘があったんです。ディズニーランドみたいに楽しめる設備がたくさんあって、外観も内観もきれいで、ちょっと見たことがない物件でした。でも、別荘としての需要は終わってしまったため、会員制の超高級レストランにつくり変えたんです。シェフを呼んで、1日6組限定、1名10万円以上のコース料理を出す。ものすごく流行っていて、何年も先まで予約が埋まっています。富裕層をターゲットに絞ったのもよかったんでしょうね。人は『特別』に弱いです。そこは、すごい成功例ですよ」(同)
また、空き家を買いたいという場合は草の根運動が効果的だ。
「これから空き家を安く買いたいと考えている方は、ボロボロの家や使っていないと思われる空き家にチラシをまいてみてください。これが意外と効果があり、すぐに持ち主から連絡がくることもあります」(同)
他にも、欲しい空き家の近くの不動産業者を回ったり、友人知人に「いらない家はないか」と聞いて回ったりする。これらは、不動産業者もやっていることだという。
「オーナーさんとのつながりをつくるために、ホームクリーニングの会社を起ち上げる不動産業者もいます。物件の掃除を依頼してくるオーナーさんは、他にも部屋や家を持っている場合があるため、手に余った空き家の話を聞けることがあるのです。情報がほしくて、ホームクリーニングでアルバイトをする方もいるくらいですよ」(同)
老後のためにと空き家ビジネスに参入するのは、ほとんどが一般的な会社員だという。空き家を持て余しているのであれば、一考の価値があるのではないだろうか。
(文=桜木ピロコ/ライター)