1989年時点の世界時価総額では、首位の日本電信電話(NTT)をはじめ、日本企業が躍進した。上位50位までにランクインした日本企業32社のうち金融機関が17社だった。金融機関が“日本株式会社”の成長を牽引してきたことがわかる。だが、バブル崩壊で、ジャパンマネーの時代は終焉した。
90年代半ばから2000年代初期にかけて勃興したインターネット銘柄の株価上昇で世界の時価総額ランキングは米国企業が席巻した。遅れて、中国企業が大躍進してきた。アリババ、テンセントなど中国勢が一時もてはやされたが、あっけなく失速した。今日、米国ハイテク株の独り勝ちが際立っている。
22年1月時点の世界時価総額ランキングでは、米国企業が上位を独占中だ。ベスト10でサウジアラビアのアラムコと台湾TSMCの2社以外はすべて米国だ。日本企業は50位以内にトヨタ自動車(31位)が1社だけ顔を出している。世界のトレンドが製造から金融、そしてITへと大きく変化してきていることを、ワールドワイドの株式時価総額は映し出している。
アップルはアップル・カーをテコに時価総額4兆ドルへと再び駆け上がっていくのだろうか。だが、過去には「アップル・ショック」が繰り返し起きている。19年1月、中国市場でのiPhoneの販売不振が引き金となり、18年10~12月期の業績予想を大幅に下方修正したことから、世界的な株安を招いた。その影響はアップルに半導体や部品を供給する日本企業にも及んだ。
アップルが株式市場で咳をすれば世界経済を左右し、肺炎が起きるような重みを持っている。
米国の金利政策の大転換が迫っている。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は1月26日、インフレ抑制に向けて3月に利上げを始める方針を示した。米金融政策の引き締めは、ハイテク株バブルの崩壊の引き金を引くことになる。すでに米国の大型ハイテク株の売りは始まっている。
動画配信サービスのネットフリックス株は1月21日に20%を超える大幅安となった。1~3月(第1四半期)の会員数の見通しがウォール街の予想を大きく下回ったのが嫌気され、株価は約10年ぶりの下落率となった。フェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズとアマゾン・ドット・コムの株価は上場来高値から20%以上、下落した。
アップルは時価総額が3兆ドルを突破した1月4日の高値182.94ドルから、1月26日の安値157.82ドルまで16%下落した。新型コロナウイルス変異株の急拡大、原油価格の高騰、ウクライナ情勢の緊迫化という3つの悪材料があるが、FRBの金融引き締め宣言がトドメを刺すこととなるのだろうか。
ハイテク株のバブルの宴は終わるのか。それとも再生するのか。もう少し様子を見る必要があるかもしれない。
(文=編集部)