話題のアップル・レガシーコンタクト機能、持ち主=故人の意外なメリットと注意点

話題のアップル・レガシーコンタクト機能、持ち主=故人の意外なメリットと注意点の画像1
アップルのHPより

 アップルは昨年11月9日、iOS15.2に「レガシーコンタクト」機能を追加し、話題を集めていた。これは、事前にアップルアカウントにアクセス可能な人物を指定しておくと、その持ち主の死後、指定された人物がデータやIDを継承できるという機能だ。指定された人物がアクセスできるのは、故人の写真、メッセージ、メモ、ファイル、連絡先、カレンダーイベント、アプリ、デバイスのバックアップなど。指定された人物でもアクセスできないのは、iCloudキーチェーンやライセンスで保護されたメディアなどだという。

 そこで、今回は『デジタル遺品の探しかた・しまいかた、残しかた+隠しかた』(日本加除出版/伊勢田篤史氏との共著)などの著書を持つ、元葬儀社勤務のジャーナリスト・古田雄介氏に、「レガシーコンタクト」機能が登場した背景や使用することのメリット、注意点などについて聞いた。

持ち主と遺族、それぞれのメリットは?

 そもそも、これまでに故人のデータにアクセスできないことでどんな問題があったのだろうか。

「問題に感じるのは、当然ですが残された遺族や関係者です。デジタル遺品には、ネット銀行の口座やサブスクリプションの契約などお金に絡むものはもちろん、家族写真やメールなど遺族にとっても大切に思えるものもあります。そうした遺品にアクセスできないことに切実な悩みを抱えて、問い合わせをしてくるケースがこれまで多くありました。遺産や大事な思い出がそこにあるのに触れられない状況は遺族たちに大きな負担となります。

 もちろん、遺される人にそんな思いをさせないために、データは本人が生前に整えておくのが一番ですが、やはり急死して取り出せなくなってしまうケースもあります。そんなトラブルを解決するために、今回、『レガシーコンタクト』機能が実装されることになったのでしょう」(古田氏)

 では、この機能は具体的にどういったものなのか。

「故人のiCloudの中身をアプリ単位で指定した人物に託すことができます。つまり、写真は家族に託し、仕事上のファイルは同僚に託すというように、利用者が生前にデータを渡す相手を選べるわけです。

 指定した相手にはスマホやメールなどを介してアクセスキーURLが届きます。持ち主が死亡した際には、そのURLにアクセスして死亡証明書や除籍謄本など、公的に死亡を証明できる書類をアップロードするわけです。するとアップルの確認が入ったのち、iCloudへのアクセスが開放されるという仕組みです」(古田氏)

 公的な死亡の証明書が必要であり、アップルの確認も入るとなればセキュリティの面でも安心だ。では、同機能を利用する際に覚えておくと良いポイントはどういったことだろう。

「遺された人たちにとって一番ありがたいのは、知りたいことや欲しいデータがまとめてあるということだと思います。ですから、持ち主は遺される人が必要とするであろうデータをまとめたうえで、設定するのがいいのではないでしょうか」(古田氏)

 しかし、自分の死後にその機能が発動される持ち主にとっては、どんなメリットがあるのかわかりづらいようにも思える。

「持ち主にとってのメリットはわかりづらいかもしれません。けれど、この機能を利用することで意識が変わり、副産物的に得られるメリットはいくつかあると思います。まず、意識の変化によって提供するデータと見られたくないデータを分けておくなどの準備ができれば、死後の名誉が守られます。これは十分にメリットといえるのではないでしょうか。

 また、これは直接システムの機能から得られるメリットではありませんが、そもそも自分のデータが特定の人に見られてしまうことが日頃から想像できれば、デジタルの持ち物の整理の仕方も変わってきますよね。このように、“デジタル終活の第一歩”として同機能を利用することで自分の死後のことを意識できるようになるのは、いいことなのではないでしょうか」