トンガ噴火、日本での今年中の巨大地震の予兆なのか…深発地震と熱移送説より検証

深発地震と大地震の関連性

 話を熱移送説に戻すと、著書の企画編集者である前田和男氏が過去30年間にわたってUSGSなどのデータを調べたところ、地震予知につながる可能性が見えてきた。それによれば、「地下410~660kmでマグニチュード5.5以上の深発地震が1カ月に5回以上連続して発生し、同時期に火山活動も活発になると、1年以内に環太平洋地域でメガ地震が起きる」確率は80%を超えていたのだ。さらに日本及び日本近隣(オホーツク海や千島列島など)でマグニチュード6超の深発地震が発生すると、日本で大地震が発生する可能性が格段に高くなることもわかった。

 直近の状況を見てみると、昨年4月と10月の2度にわたって、マグニチュード5.5以上の深層地震が5回以上連続して発生している。同8月に小笠原諸島(福徳岡ノ場と西之島)で大規模な火山活動が起きた。同9月には13日に東海沖の地下370kmでマグニチュード5.8、29日に石川県日本海沖の地下364kmでマグニチュード6.1の深発地震が発生している。そして今回のトンガ大噴火だ。

 過去30年のデータの分析が正しいとすれば、今年中に日本でメガ地震が起きる可能性が高いのだ。今年起きる可能性が高いメガ地震の震源地については、角田氏からの見解がまとまった段階で、改めてお知らせしたい。

 大地震発生の条件はあくまで「仮説の卵」にすぎない。だがこの仮説の強みは著書の帯に「あなたも地震を予知できる!」と書いたとおり、地震学の知見がなくても地震予知の方法の発見に寄与できる点だ。USGSへのデータベースに誰でもアクセスできることから、「仮説の卵」に興味を持っていただいた方々が、深発地震と地表で起きる大地震の関係を様々な角度から分析していただければ、精度の高い地震予知の方法が必ずや見つかるものと筆者は期待している。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

●藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー 

1984年 通商産業省入省
1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)
1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)
1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)
2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)
2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)
2016年 経済産業研究所上席研究員

2021年 現職