「楽しい海外出張の手引き」は一読してそれで終わり、ではありません。例えば、今度はまだ先輩社員の誰も行ったことのない国に行く自分のケースに当てはめて、若干なりともアレンジ(加工)し、出張中も携行して使うことになります。個々の具体的な知識を使いこなすには、体系的な方法論と、基礎知識の体系に触れ、ある程度咀嚼して、いざ本番のときに使えるよう身に付けていなければなりません。
そうすると、多くの場合、100ページを超える書籍レベルの規模の図解入り文章を「読む」必要が出てきます。そこには、章立て、目次の形で知識の構造、体系が示され、基本的には先頭から読むと、体系的に理解できるようになっています。
書籍には知識の比率が高く、ただのニュース記事、一般のWebページの大部分は、情報にすぎないことが多いのです。ただし、いわゆる知識まとめページ(ITならQiitaのようなサイト)は書籍より粒度が小さめでその場で検索、活用するにはやりやすい知識集かもしれません。豆知識、トリビアともよばれる蘊蓄系のページ、昔なら、おばあちゃんの知恵、みたいなページは1冊の書籍には不足だし、体系も構造も小さすぎてあまり知的トレーニングにはならないけれど、気分転換には良いものですね。
ちなみに、「レファ本」といわれる、個別知識を百科事典のように網羅し、膨大な情報量をもった原典タイプの書籍があります。通読するよりは辞書のように、その都度「ひく」ものであり、エピソードのような生情報を豊富に含んだりするので「知識」度は通常の実用書、教科書より下がるかもしれません。
でも、これはこれで大いに価値があります。お奨め「レファ本」の具体例とその活用法については、日垣隆さんの名著『使えるレファ本150選』(ちくま新書)をぜひご参照ください。目次にある「ニュースに惑わされない」人間になるきっかけがつかめるかと思います。
目下の課題、目的にぴったりの知識(多くは書籍)をどうやって見つけたら良いでしょうか? Amazonの書籍検索のレビューを読んだり、他の書評サイトをみたりしてもいいですが、そもそも、検索キーワードすらわからないとか、検索でヒットした多数の書籍の良しあしが(読む前なので)さっぱりわからない、という時はどうしたら良いでしょうか?
自分の調査法(範囲、発想)、自己流の知識獲得法、活用法の殻を破ってくれる図書館の活用がお奨めです。元新聞記者・現フリーランス・ライターが執筆した『図書館「超」活用術 最高の「知的空間」で、本物の思考力を身につける』の、「すこし長めのまえがき」「なぜいま『図書館』なのか」「ネットでは見つからない自分だけの“解”」の冒頭には、
・仕事がうまくいかないなら、図書館に行くべきだ。
・忙しくていつも時間が足りないなら、図書館に行くべきだ。
・明日〆切の大事な仕事を抱えているなら、いますぐ図書館に行くべきだ。
と、一見すると「何をそんなに悠長な!?」と驚くほど、挑発的な問いかけとその回答=「図書館に行け!」が掲げられています。でも大丈夫。表紙にある、次の呼びかけは実に正しいと思います。
「ネットにはない『場としての力』をフル活用せよ!! 」
「みんなと同じ情報源(ソース)、同じ答えではもう生き残れないし、幸せになれない。」
「図書館をフル活用できれば、仕事も人生ももっとうまくいく!」
誰も教えてくれない、答えなき時代の「知的生産術」である。ということで、図書館の「空間力」が、「集中力」「発想力」「思考力」「教養力(良い脱線で独創的な発想に至る素材)」などを助けてくれることが、様々な実体験と共に具体的に示されています。