日本政府は海外からの投資を規制する改正外為法を施行。原子力など国の安全に関わる業種に外資が出資する際の事前審査を強化した。萩生田光一経済産業相は記者会見で「東芝が安保保障に関わる重要な技術を保有する企業であることは間違いない」と明言した。「会社丸ごとの買収」による非公開化のシナリオが流れたため、ひねり出されたのが会社の三分割。三分割は「物言う株主」に出て行ってもらうための苦肉の策なのだ。
「事業価値を高める」というのならカンパニー制でいいはずだ。三分割して、いずれの会社も上場を目指すのは「株主を儲けさせて追い出すため以外には考えられない。プレミアムをつけないとハゲタカは納得しない」(世界のM&Aの動向に詳しいアナリスト)。
東芝には株式を買い取るための資産はある、といわれている。芝浦や京浜間など首都圏に土地やビルがあり、それらを売却すれば資金をつくれる。だが、経済安保の壁は厚かった。
「経産省は東芝が中国に買われては困るので、非常にこだわっている。東芝の“保護者”をやめる気はない。それでも、うかつに手は出せなくなった。物言う株主の主導で経営陣に株主総会における経産省と経営陣の“癒着”を公表する報告書を出させたことでもわかるように、ファンドは賢く立ち回っている」(前出のアナリスト)
危機下でもお家芸の内紛の種は消えていない。“ポスト綱川”と3つの分割会社のトップを狙ってのせん動だ。4月に社長に返り咲いた綱川氏は暫定的に取締役会議長も兼務している。11月12日の会見で綱川氏は「いまのポストにある限り、スピンオフの遂行に向けて全力で取り組む」と続投に意欲を滲ませた。次期社長の最短距離にあるとされる畠澤守副社長を名指しして「過去の不正会計に関して東芝全体を倒産の危機にさらした」と批判した怪文書が社内外に乱舞している。新しい勢力の台頭を阻止しようとする陣営を交えた情報戦の様相を呈している。お互いに刺し合いとなっている図だ。
東芝は外堀も内堀も埋められてしまった。粛々と解体されていくしかないのではないのか。
(文=編集部)